「人生は加速する」というのは本当か?
作家浅田次郎氏がエッセイの中で書いていることですが
フランスの心理学者ピェール・ジャネという人が「人生は加速する」という学説を唱えています。
それは「人生の一時期における時間の心理的な長さは年齢に反比例する」というものです。
これを具体的に言うと、例えば10歳の少年の1年は人生の10分の1だが、60歳の1年は人生の60分の1しかないから、心理的に短く感じる、というものです。
この説について浅田氏は「わかったような、分からないような」と書いています。
ペェール・ジャネの「ジャネーの法則」とは
ジャネーの法則
ジャネーの法則は、19世紀のフランスの哲学者ポール・ジャネが発案したものを、甥の心理学者ピェール・ジャネが著書において紹介したたもので、「主観的に記憶される年月の長さは、年少者にはより長く、年長者にはより短く評価される」という現象を、心理的に説明したもの。
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いかがでしょうか、上の説明でジャネーの法則は理解できたでしょうか。
おそらく多くの方が、浅田次郎氏同様に、「わかったような、わからないような」というような状態なのではないでしょうか。
60歳の人の1年は10歳の少年の1年の6分の1でしかない
確かに10歳の少年の1年は人生の10分の1で、60歳の人の1年は人生の60分の1であることは間違いなく、これについては誰もが理解できるでしょう。でも問題はその次です。
生きてきた期間に対する1年の値は、10歳の少年に比べると60歳の方が圧倒的に少ないことは分かりますが、1年の量は10歳も60歳も同じであるはずです。
つまりどちらにとっても1年は365日で変わりないのです。
それなのになぜ60歳の方がはやく早く過ぎるのでしょうか。
60歳の方が早く過ぎるというのは万人が認める事実で、10歳の少年とは明らかに異なるのです。
これについてはいったいどのように理解したらいいのでしょうか。
早く過ぎる気がするのは、残り少なく貴重なものだから
ジャネーの法則にあるように、確かに60歳の人の1年は、10歳の少年に比べるとその値は6分の1でしかありません。
つまり60歳は10歳に比べると同じ1年が6倍も少ないのです。これでは短く感じるのも当然です。しかしここでよく考えてください。
ジャネーの法則をよく読んでみると、「年少者にはより長く、年長者にはより短く評価される」という現象を、心理的に説明したもの。とあります。
問題はこの心理的ということです。つまり、10歳と60歳の1年の違いは、あくまで心理的なことであるという点です。
ではなぜ、心理的にこうした違いが生じるのでしょうか。
それは両者の残り時間の差にあるのではないでしょうか。
これについて具体的に書いてみましょう。
例えば平均寿命が70歳とすれば、10歳の少年には残りが60年あります。
一方60歳の人の残りは10年しかありません。
何事もそうですが、希少価値と言われるように、一般的に人は量が少ないものにより大きな価値を見い出すものです。
とすると、残りの多い少年に比べると、残りが少ない60歳の人の方が1年の価値はうんと高いはずです。
価値が高いゆえに大事に思う気持ちも高くなります。そのため失いたくない気持ちが強くなります。
その結果、時の経過ばかりを意識するようになります。
一方少年の方は、残りが多いゆえに、1年をそれ程貴重なものと思わず、時の経過など意識せず忘れてしまっています。
過剰に意識することと忘れてしまうことでは、速く経過するという点で大きな差が生じるのは歴然としています。
要するに、高齢者が時が速く過ぎると感じるのは、「残り少なく貴重なもの」と思う気持ちが強いからなのです。
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