悩み事をパートナーにだけ相談するのは果たして正しいことだろか?
上のグラフを見ると分かるように、悩み事を相談する相手としてパートナーを選ぶ率が、わが国だけダントツに高くなっている。
悩み事を相談する相手でいちばん多いのが配偶者などのパートナーであることが、はたして良いかどうかを考えてみて、Yesか、Noの答えを出すときは少し複雑な心境になる。
パートナーを相談相手にするということは、よく言われる「夫婦の間に隠し事があってはならない」といういささか古い教訓めいたことと同列にある考え方のようでもあり、もしそうだとすると余計に?がつきそうである。
一般的に悩み事を相談する相手は、たいていの場合自分より人生経験の豊富な人を選ぶのが自然ではないだろうか。
つまりそうした人は一般的な考え方に自分の経験を重ね合わせた判断に基づいて回答を引き出すことができるからである。
これに対して、例えばアラサーぐらいの女性が、自分より僅か2~3歳上のパートナーの男性に相談して、はたして良い答えが返ってくるだろうか。
もちろん問題にもよりけりだろうが、一般的に考えればいかにパートナーがが聡明で判断力に優れている場合でも、適切な回答を出すのは難しいのではないだろうか。
なぜなら経験というこうした判断に最も必要なケーススタディが不足していると思われるからである。
こうした考え方に立てば、日本人の60%以上がパートナーにだけ相談して悩み事を解決しようとしている姿は、どうも正しくないように見えて仕方がない。
なぜならば、なにかすごく安易な方法で重大問題の解決をはかろうとする姿が見えるからだ。
本日は「悩み事を誰に相談するか」という国際調査のデータを見ながら、この問題について考えてみた。
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悩み事や相談事を、まず、誰と相談しているかという点についての国際共同調査の結果を見てみよう。
何れの国でも、1番多い答えは夫婦(結婚していないパートナーを含む。以下同様)であり、2番目には友人・知人が来る(インドだけは2位~3位が母親、父親と特殊)。ただし、夫婦、あるいは友人・知人と回答した人の割合では、日本人の特殊性が際立っている。
すなわち、夫婦と回答した者は、日本人以外は、すべて40%台とほぼ同等の水準であるのに対して、日本人だけは60%と特別に多いのである。また、友人・知人については、インドを除くと日本人の回答率は10.4%と最低である。
日本人は深刻な相談事をする友人が余りおらず、すべて夫婦相互に依存するという体質が明確に見て取れる。
日本人は夫婦の緊密さが世界一なのである。この夫婦関係の緊密さは高齢者の心の支えについての意識調査でも日本人の特徴であった(図録1307参照)。離別者・死別者の自殺率が高いのも同じ理由だろう。
こうした結果を、日本人の夫婦は仲良しで好ましいと感じるか、あるいは夫婦以外の人間関係が希薄で社会の絆の強化の必要性を感じるかについては、見方が分かれるだろう。
職場や地域や親せきとの関係が希薄となる一方で家族が一番大切という意識が強くなっている点は図録2412を参照。日本の場合は、この傾向が行き過ぎとなっている可能性がある。2011年の東日本大震災がこの点について反省する機会となったことは記憶に新しい。
日本以外の国では夫婦という回答率が40~47%とほとんど変わらないのは、ちょっと不思議な気がする。どうして友人・知人のように割合が国によってもっと異なるパターンとなっていないのだろうか。
夫婦(あるいはパートナー)はサルから人間へと進化した際に子育てのために協力し合うよう相互の肉体的・精神的な結合を運命づけられた人類に共通の特別な個体間関係だからなのだろうか
日本人だけが人類標準を上回って夫婦が依存し合うのは何故だろうか。
東京新聞の「つれあいにモノ申す」という週1の投稿コラムは日本人の夫婦関係をよく映し出している。例えば、
「伯父の葬儀に参列した時のこと。大勢の親類に会った後、夫が小声で「次からは髪の毛を染めてこい。おれが苦労させているように見られるだろ」とのたまった。その通りよ。絶対に染めないわ。(もっと楽がしたい妻・65歳)」
(2013.3.27) 社会実情データ図録 より
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