距離にして10メートルほどしか離れていない私の住むマンションのすぐ隣で、今珍しい光景が展開されている。
今から2年半ほど前に着工して去年の春にほぼ完成した姫路市内では五指に入るほどの敷地面積の広い14階建ての大きなビルの話である。
そのビルなのだが、完成直前になった去年の春、突然工事が中断され工事現場から人の姿が消え、その後1年以上も現場には人っ子ひとりとして現れず完全に放置されたままの状態になっていた。
そして一年少したった今年の五月頃になってやっと人影が現れ、それとともに再び数多くの大型重機類が運び込まれた。
それから始まったのは、なんと完成間近の新築ビルの解体作業なのであった。
姫路でも屈指のこの大型ビルだが、あと一歩で完成という直前での、まるで容赦のない残酷な解体作業が始まったのである。
いったいなぜなんだろう。
このビルは着工と同時にテナントの募集が開始されていたが、駅前の一等地である程度の入居者は確保できると予想されていたのたが、今の厳しい不況下ではそれもかなわなかったのであろうか。
聞くところによると、たとえ駅前の一等地とは言え、このところ周辺のビル入居率は芳しくなく、月を経るにしたがって次第に悪化していて、空室の数が多くなるばかりだという。
そうしたビル不況の波をかぶって、この新築ビルも入居者が集まらなかったのであろうか。
もちろん着工前にはそれなりに入念なリサーチも行われたのであろうが、それも役に立たず、まったくの見込み違いに終わってしまい、過去にもあまり例を見ないような完成前の解体という厳しい結末になってしまったのであろうか。
それにしても、この壮大な無駄はいったいどうしたものであろうか。
ビルの建築費の回収はまったくのゼロで、そればかりか新たに解体費用が上乗せされるのである。
このビルのオーナーにとっては、まさに泣くに泣けないような筆舌に尽くせないほどの大きな苦しみであろう。
でもそうした経営者の苦しみと悲しみをよそに、さも何事もなかったかのごとく、今日も重機の音を大きく響かせ、新築ビルの解体工事は続いている
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