2010年10月15日金曜日

書店の寡占化・ここまで進んでいいのだろうか?



今全国でいくつかの大型書店グループが激しい勢いで中小の書店を駆逐し続けている。

私の住む姫路市でもここ20年間くらいの間に、その影響は顕著に表れている。

ここ姫路市の代表的商店街である「みゆき通り商店街」は駅前という好立地と、このところの「世界遺産国宝姫路城」の人気の影響もあって平日でも人通りは多く、全国的に商店街が衰退傾向にある中で、まずまずの活況を見せている。

しかし驚くべきか、550メートルという長いこの商店街にいま一軒も本屋が無いのである。
50万人もの人口を抱える兵庫県で代表的な地方都市である姫路市の最も大きな商店街にである。

もし、事情を知らないよそから来た人がこの商店街で本屋を探し一軒も見つけることができなかったとき、果たしてその人はどう思うだろうか。

恐らく「考えられないことだ」とか「信じられない」というふうに思うに違いない。

地元に住む私ですら時々そう思うことがあるくらいなのだから・・・。

でもこれは現実なのである。

実はこの商店街にもかつて1980年代頃までは今とは違って7軒もの書店があったのだ。

その頃の私は暇を見ては本屋通いに精を出していたので、それら本屋の名前と場所は今でもよく覚えている。

まず姫路駅方面から商店街に入って50メートルほど行ったところに「新興書房」という3階まで売場のある中型書店があり、さらに30メートルほど進めば奥行きが長く文庫本の品揃えがいい「誠心堂の駅前支店」があった。

それから東西に伸びる大通りを渡って少し進んだところには今度は先ほどの支店の本店で、当時姫路の書店では最も敷地面積が広い「誠心堂書店本店」があった。

2階建ての広々とした店内は品揃えもよくかなりの活況を呈していた。

そして商店街の真ん中辺りまで進めば、そこには「三耕堂書店」という店もあった。

この書店は教科書も扱っており、ここで高校の英語教科書を購入したことが記憶に残っている。

さらにもう少し北に進んで商店街が切れる直前の国道2号線の近くには洋書で有名な、かの「丸善」の姫路支店があったのである。

この店ではあまり本は購入しなかったが、立ち読みだけはよくさせてもらった記憶がある

このように今も記憶にある五つの店だが、これ以外にも他にも店があったような気がして、念のためネットで調べてみると、当時のみゆき通りには本屋が全部で7店あったと記されていた。

残念ながらあと二つの店の名前は思い出せないが、とにかく1980年中ごろまでは商店街の規模にふさわしく7店もの本屋がれっきとして存在していたのである。

ところがである。

その1980年の中程を過ぎた頃からこれらの本屋は次々と姿を消していくのである。

まず大型書店進出前に最初になくなったのは三耕堂であった。

この書店は誠心堂駅前前支店をのぞく他の三店にくらべて規模が小さく、競争力という点では力不足は否めなく、最初に淘汰されたのは致し方ないことかもしれない。

それから訪れたのが駅前の女性ファッションの店が集中するフォーラスというビルへの「J」という大型書店の進出であった。

この書店、そのビルの広い六階のフロアーを全部占めるという当時では見たことも無いような巨大な書店であった。

広いフロアーの端から端まで背の高い幅広の書棚が何十と並ぶ風景は見ていて壮観でさえあり、その書棚には実に30万冊にも及ぶ膨大な数の本が陳列されていたのである。

その規模たるや売り場面積にしても、陳列書籍数にしても既存の店すべての合計より大きかったのである。

となれば当然需要より供給のほうが高くなって、既存の店は当然経営が圧迫されてくる。

そしてついには存続が難しくなり、廃業に向かうのはごく当然のことである。

こうして丸善姫路支店、誠心堂駅前支店、誠心堂本店、新興書房の順に次々と閉鎖されていったのである。

さらにこの「J」という大型書店はその後立地のいい場所に2度も店舗を移し、現在は今後急発展が予想されるJR姫路駅構内の女性ファッションアーケードの2階に巨大な店舗を構えているのである。

そのあおりを受けて今度は駅南側に進出していた「新興書房駅南支店」までが閉鎖に追い込まれる始末である。

でも、なぜ地元で長年がんばってきたこれらの老舗の書店が、急遽進出してきた大型書店に駆逐されてしまわなければいけないのであろうか。

いったいこうした大型書店の横暴と言ってもいい行為は許されるのであろうか。

こうした場合、例えば独占禁止法などの法律ははいったいどう機能を果たしているのであろうか。

長年慣れ親しんできた店を急に奪われた消費者には、そんな疑問もわいてくるのである。

再販制度によってその価格が守られ、原則として値引販売を禁止されている書籍だけに、大型書店の進出といえどもなんら価格面でのメリットなどは無い。

一カ所での豊富な品揃えもいいが、消費者にとってはそれぞれの特色を持つ中小の店が数ヶ所あったほうがいいような気もするのだが。

とにかく今全国で急展開されている書店の寡占化だが、その強引とも言える行き過ぎた展開に問題はないのだろうか。

監督する関係官庁にはよく考えて欲しい問題である。

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