売れない弁護士は演技力を磨き、いつも救急車のサイレンに気をつける
最近の朝日新聞に仕事がない弁護士のことが書いたあった。
確か日本各地の多く大学に法科大学院が設置されたころから、急にクローズアップされてきたのが仕事のない若手弁護士の急増問題である。
でも弁護士の数が増えてきたといってもまだ3万4000人程度で、100万人を越えているというアメリカの数十分の1でしかない。
もっとも米国では司法書士や行政書士なども弁護士数に含まれているので単純に比較できない部分もある。
それにしても人口比では3万4千人が多く過ぎるということでもないだろう。
だからこそ国は法科大学院を増やして弁護士の数を増やそうとしたのだ。
しかしその目論見には反して、弁護士の数が増えたのはいいのだが、せっかく司法試験に合格してはれて弁護士になったのに、仕事がさっぱりないのである。
弁護士の仕事といえば裁判の数に左右されるのだが、その裁判の件数はこのところ少しも増えてはいないのである。
そのせいで経験の少ない若手弁護士まで仕事が廻ってこないのである。
しかし考えてみればどの世界でも売れない人種はいる。
売れない役者、売れない作家、売れない歌手、売れない野球選手、などなど、世の中にはプロといえども売れない人はわんさといるのである。
したがって売れなければ売れるように努力しなければいけない。
もう随分前に出た本だが「訴訟社会アメリカ・中公新書」によれば、米国の売れない弁護士が顧客獲得のためにやっていることが二つある。
その一つは演技力を磨くために俳優養成所に通うこと、そしてもうひとつはいつも身構えていて、救急車のサイレンがなるとすぐ後を追っかけるのだという。
つまり演技力は法廷で争うための弁護士にとって必須の技術であり、また救急車を追っかけると、その行くつく先には必ず何らかの事件が待っているからなのである。
ちなみに米国ではこうして救急車の後を追っかける弁護士のことを”アンビュランスチェイサー”(ambulance chaser)と呼んでいる。
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若手弁護士 仕事足りない、就活難航 借金の返済も進まず
若い弁護士が借金や就職難、仕事不足に苦しんでいる。裁判の数は増えていないのに、
司法制度改革で弁護士数が急増しているからだ。
愛知県弁護士会は、そんな若手へのサポートを充実させようと、
専門性を高める手ほどきや経済的な後押しといった支援策について 話し合う協議会を発足させた。
経験不足、借金減らず
昨年12月に弁護士になった名古屋市の男性(28)は6月末、勤めていた事務所を
退職した。出産間近の妻(31)を実家に戻し、自らも両親の家に移った。
多くの新人弁護士と同じく、昨冬、事務所に就職した。仕事をあてがわれ、能力を養い、
人脈を広げるつもりだった。しかし、休みなく深夜1時、2時まで働く日々。
4月には心療内科で業務過多による適応障害と診断された。
転職を考えたが、借金があった。法科大学院時代の約300万円に加え、司法修習時の
生活費約300万円。
国が司法修習生の給与を支払っていた「給費制」から、
修習生に 生活費を貸し付ける「貸与制」に変わったためで、返済が全く進んでいなかった。
「弁護士 を諦めるには、これまでかけてきた時間とお金があまりにも膨大すぎる」
大学生のとき、足利事件などの冤罪(えんざい)事件について学んだ。「国家による
人権侵害の最たるものだ」と感じ、冤罪で困っている人を救いたくて、弁護士を目指した。
だが、実際には手弁当でやりたい仕事をする余裕はなかった。
事務所を辞めて、新たに就職活動をした。法科大学院時代までさかのぼってあらゆる
人脈を頼り、なんとか2カ月間かかって弁護士での就職先を見つけたが、一時は長女を出産
したばかりで里帰りしていた妻と、再び一緒に暮らせるかどうかもわからない状況に陥った。
「不安で仕方なかった。弁護士が増えるなか、ベテランの先生たちも必死に仕事を探して
いる。経験の浅い自分が独立しても到底やっていけない。
依頼者も、借金を背負った経験の 浅い弁護士に任せたいとは思わないでしょう」と自嘲気味に語った。
朝日新聞デジタル 2013年8月25日