大の新書ファンで新刊にはいつも気を配っているつもりであったがこの本だけは見逃していた。2009年の発行だからもう2年も前に出た本ではないか。
遅ればせながら言わせてもらうと、この1年ぐらいの間に読んだモノ100冊余の中でも間違いなしに五指に入る好著である。
先ずこのすばらしい本の著者に最敬礼!
「ミナシダキリュウ」と読むそうだがこのユニークなペンネームはどうだろう。また由来はどのようなものなのだろうか。
この本の良いところはテーマに対する考察の鋭さもさることながら、なんと言っても著者の言葉づかいにおける感性の鋭さと熟練された巧みなレトリックである。
こういったサブカルチャーなどという比較的新しい分野においては、そのテーマが新鮮であるだけに使われる語彙もまた新鮮でかつ斬新であるのが望ましい。
著者は詩人として数々のメジャーな賞を受賞しており、さすがに言葉づかいにかけては卓越した才能を持っているようである。
この分野の書き手の作品としては過去に三浦展の「非モテ!男性受難の時代」とか雨宮処凛著「ロスジェネはこう生きてきた」あるいは湯浅誠著「反貧困」などを読んできたが、それらの作品と比べてもこの作品は一歩抜けている観がある。
特に見出しタイトルのコピーは抜群に優れており例えば46ページに良い男の条件としてあげている「求む!札束と花束を背負ったいい男」というキャッチコピーは思わず「うーん」唸ってしまうぐらい見事なものだ。
3章まではサブカルチャー論、4章以下では社会のありようなども説かれていて記述はやや難解になり、一種の哲学的書物の様相すら呈している。
この人が詩人であるということもあってか、読んでいてふと明治の名歌人「与謝野晶子」を思い出した。
では私の感想はこれぐらいにしてこの本に関するネットに載った他の書評をいくつかご紹介することにする。
(その1)
名前からはわかりにくいですが、著者は女性で詩人でもある方です。以前にも『黒山もこもこ、抜けたら荒野デフレ世代の憂鬱と希望』という新書を紹介したことがありました。
本書は「無頼」というあまり日常ではそれほど使わない言葉を軸にして、この数十年の「ニッポン女子」について語られています。
このような言葉を選択するところに詩人の感性が表れているのかもしれません。本書の目次は以下の通りです。
ライブドアブログ「精神科医が説く自己成長へのヒント」より
(その2)
本書で特に面白いのは、第四章の「サバイバル・エリートと婚活現象」。勝間和代女史が、マネータブーと出世タブーの二つを打破し、自身をロールモデルにしたサバイバル・エリート像を構築したと、筆者は指摘する。
しかし、勝間女史のリスク・リテラシー論からは自己責任論の匂いを発散させている。このことに異を唱えたのが、香山リカ女史だった。
筆者は、この二人のことを「伝道師」と「治療師」と的確に述べている。
そして、重要なのは、勝間・香山論争からこぼれおちる、「しがみつかざるを得ないが、<勝間和代>にはなれない人たちが多くいること」で、彼らこそがサイレント・マジョリティだと、指摘していることだ。
今の日本には、とにかく「安心」したい人で溢れている。その明確な指針がキャリアアップだったり、お金だったり、結婚だったりしている。だから、勝間本のような自己啓発書のブームと婚活ブームは、コインの裏表だと喝破している。
ネット Parsleyの「添え物は添え物らしく」より
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