まず上の図表を見て欲しい。これで注目すべきは韓国の驚くほど高い大学進学率である。
恐らくこの表を見るまでは私たち日本人の誰もがこれほど高い進学率は予想していなかったのに違いない。
これで見る限り1990年ぐらいまでは日本とほぼ同じぐらいの伸び率であったのが、その後急速に伸びていき、あっという間にわが国に大差をつけるほど急進し、いまや80%を超える世界一の大学進学率になっているのである。
これまで先進国で最も高かった英国にさえ、20%以上の差をつけている。
まあそれはともかく、本日のテーマは大学進学率の国際比較ではなく、このところよく言われている格差、つまり学歴による賃金格差についてを取り上げようとしているのである。
上に掲げている図表(2)によれば、日本の学歴による賃金格差はほとんどないといっていいほどでそれほど目立つほどの差はない。
それに比べて米国と韓国ははっきりと格差が現れており、まるで日本の比ではない。
米国について言えば、かなり以前から歴然とした格差はあり、それは現在も是正されていない。
一方韓国は昔はそうでなかったものが、今は年を経るにしたがって大きくなっており、このところ大きな社会問題にもなっているのである。
ではそれらの実態を韓国については朝鮮日報日本語版の記事で、もう一方の米国についてはネットのブログの記事でご紹介することにしよう。
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大卒・高卒の賃金格差、50代前半で2倍
韓国が「大学生共和国」になっているのは、高卒者と大卒者の賃金・昇進・業務格差があるからだ。
仁川市内の工業高校を05年に卒業したイさん(25)は、家族が引き止めたのにもかかわらず、大学に行かずに小さな電子関連会社に就職した。「大学を出ても就職が難しいのだから、高い授業料を払ってまで行く必要はない」と判断したのだ。だが、現実は違った。
高卒と大卒・初任給時点ですでに大差が
高卒のイさんは月給が120万ウォン(約8万9000円)だったが、同じ仕事をしている四大卒の社員は200万ウォン(約14万9000円)だった。しかも、同僚との賃金格差は年を追うごとに広がっていった。
イさんは「高校の時は『一生懸命働きさえすれば、やりたいことをしながら安定した生活ができる』と思っていたが、間違いだった。
だからみんな大学に行こうとするのだ」とため息をついた。雇用労働部(省に相当)の統計によると、高校を卒業してすぐに入社した社員と大卒社員とでは、50代前半(50−54歳)で賃金格差が2倍になるという。
高卒社員を蔑視する風潮が
高卒の勤労者が社会的に無視され、傷つけられるケースも多い。06年に京畿道南楊州市内の女子商業高校を卒業し、ある企業に就職したソンさん(24)は「高卒だと話すと、『問題児』『貧乏な家の子』と決め付けられ、見下されるのがとてもつらかった」と話す。
延世大学のハン・ジンサン教育学部長は「学歴間の賃金格差などは、解消しなければならない韓国社会の慢性的な問題。これが原因で、全員が大学に行く『大学仮需要』問題が深刻化している」と指摘した。
仮需要とは、実際の需要がないのに生じる需要のことだ。さらに「政府は、公企業職員採用時に、大卒者だけを対象とする公募の慣行を打ち破り、率先して模範を示さなければならない。
民間企業でも能力中心の採用や給与体系を積極的に導入すべき」としている。
キム・ヨンジュ記者・カム・ヘリム記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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ではこちらの方も日本と比べて格差が大きいとされているアメリカではどうなのだろうか。
これについては、よくその実情が語られているネットのブログで見てみよう。
学歴社会の日米比較 2008/5/18 小島茂
よく、日本社会や日本の教育制度を論じる際に「日本は学歴社会だからダメなんだ」と批評する人がいる。
しかし、実際にはアメリカのほうがはうるかに厳しい学歴社会であり、それはほとんど「学歴差別」と言ってもいいほど徹底されている。
アメリカは学歴社会が徹底されている
もっともわかりやすいのは、初任給だろう。
日本の企業で初任給といえば、新入社員に対して一律に同じ額が支払われるのが一般的である。
たとえ東大卒だろうと地方の私大卒だろうと、同じ会社に入社したからには、初任給も同じ額だ。
ところがアメリカの企業では、同じ企業であってもハーバード大卒の新入社員と、田舎の州立大卒の新入社員とでは、初任給の時点で大きな開きがある。
これはアメリカの給与体系が」その人の現在の商品価値」を評価したうえで対価を支払うという原則によって成り立っているためだ。
ハーバードを卒業したということは、それだけでAという価値があり、田舎の州立大を卒業したのならBという価値しかない。まだはたらいてもいないうちからそんな評価がなされるわけである。
さらに、同じ大学を卒業した者同士であっても、大学時代の専攻やキャリアによって初任給が変化する。一般的には文系よりも理系のエンジニアのほうが、年俸にして1万ドル程度高く評価される傾向にある。
そして日本では考えられないことだろうが、これら初任給は企業と新入社員のネゴシエーション(交渉)によって決められるのだ。
要するに、アメリカではビジネス的に成功しようと思えば一流大学に進むか、あるいはベンチャー企業を起こすか、という2つの選択筋に絞られるのだ。
日本も、戦前までは、大学による給与格差が歴然としていて、帝大卒と私大卒の初任給には明白な格差があった。その点、どの大卒でもいったん採用されれば給与は同じという戦後は学歴社会が希薄化したといえる。
大学院の教育の質で決まるアメリカの賃金レベル
また、日本の学歴社会は学部レベルの話だが、アメリカの学歴社会は大学院レベルの話である。
すなわち日本は大学院教育が著しく遅れ、文系では進学率も相変わらず低いので、どの大学院を出たかは問題ではなくどの大学を出たかが生涯つきまとう。
その点、アメリカでは大学院教育が充実していて、進学者も多いので、どの大学を出たかが問題ではなくどの大学院を出たかが生涯つきまとう。この点に関しても、臼井氏は、以下のように述べている。
アメリカのエリート層たちは、「どこの大学を出たか」はあまり話題にしない。
それよりも、どこの大学院を出たかが問題なのだ。たとえば、ハーバードのビジネススクールを出たとか、イエールのロースクールを出たとかが問題になる。
アメリカが学問分野でも世界の頂点に立つことが出来たのは、この大学院制度の発明のおかげであるとされているほど、画期的なものだった。
さて、先にも紹介したように、アメリカは日本以上に学歴社会だ。
特に企業はその人がどのレベルの学位をもっているかによって評価し、給与を決定する。もちろん、大学院やロースクール、ビジネススクールを出たほうが給与が高くなることは言うまでもない。
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〈参考資料〉
・朝鮮日報日本語版
・学歴社会の日米比較 2008/5/18 小島茂
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1 件のコメント:
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
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