3月下旬に日本で行われたアスレチックス—マリナーズの日本開幕戦に続き、米大リーグは4日に米国本土でも開幕。
春季キャンプでの調整を終えた全チームの選手たちがスタートラインに立ち、ワールドシリーズでの頂点を目指す戦いが始まった。
しかしその中に松井秀喜の姿はない。
3年前にはヤンキースでワールドシリーズMVPに輝いた松井だが、アスレチックスからFAになった今オフ、獲得に名乗りをあげたチームはなかった。
米国生活10年目、なぜこんなことになってしまったのだろうか。
■契約の話が具体化することはなく
イチローが所属するマリナーズがアスレチックスと日本で開幕シリーズを戦っている間も、松井は自宅のあるニューヨークで"孤独な自主トレ"を続けていた。
もし松井がアスレチックスに残留していれば、このシリーズは「松井対イチロー」と銘打たれ、日本では歴史に残るほどの盛り上がりをみせていたのではないだろうか。
しかし、一時は引き留めにかかると予測されたアスレチックスも、結局は松井と新契約を結ばないことを選択。
ヤンキース、インディアンス、オリオールズ、ドジャースなども候補に挙がったが、契約の話が具体化することはなかった。
37歳で迎えた今オフ、松井の仕事探しが条件面で厳しいものになることは事前から予測されていた。
しかし、まさか所属チームが決まらないまま開幕を迎えることになるとは、ほとんどの人が考えなかったのではないか。
■DHタイプの打者は軒並み職探しで苦戦
このように松井が"無職"となってしまった背景には、高齢の指名打者(DH)タイプの多くの選手が今季"就職難"に苦しんでいる現状がある。
「薬物検査が厳しくなった昨今のメジャーリーグで、30歳代後半の選手はそれほど魅力的な存在ではない。
(高齢ゆえに)コンディションを保てるかは微妙で、力を残していてもそれを発揮できるかは疑わしい。
特に守備面で疑問符がつくベテランより、若い選手を登用する方が良いと考えられている」
スポーツ・イラストレイテッド誌のトム・バードゥッチ記者がそう記すとおり、今オフに契約を得られなかったベテランは松井だけではない。
通算449本塁打のブラディミール・ゲレロ、通算2723安打のジョニー・デーモン、オールスター6回出場のミゲル・テハダ、2007年のア・リーグ首位打者マグリオ・オルドネスといったかつて一世を風靡した選手たちも、新たな所属先が見つからないまま4日の米本土開幕を迎えた。
スポーツライター 杉浦大介
日本経済新聞 2012/4/7
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