今回の大学不認可問題で一人悪者扱いされている田中真紀子文科相であるが、そのやり方に唐突さはあったとはいえ、はたしてこの問題で彼女一人を責めていいものであろうか。
これまで無尽蔵に増やしてきた日本の大学は、このところの少子化の影響をもろに受けて、いまや定員割れを起こして、その存続さえ危うくなっているところが多くなっているではないか。
こういった現状を踏まえて、いったん認可にストップをかけた田中文科相に対して、なぜ周囲はこぞって田中叩きに走るのであろうか。
そのことに対してを非常に疑問を抱いていたのだが、そうした田中批判一色の風潮に一矢を報いているのが日刊ゲンダイによる下の記事である。
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元文京女子大教授 菊池英博氏が緊急エール「私は真紀子大臣を支持する」
<問題は大学に巣くうシロアリ官僚の腐敗堕落>
3大学の認可を一転して認めることにした田中真紀子文科相に対し、自民党は「問責に値する」などと息巻いている。
大マスコミの論調も真紀子叩き一色なのだが、ちょっと待って欲しい。「大学の劣化」や「審議会のあり方」を問題視した真紀子の言い分は正論だ。
元文京女子大(現文京学院大)教授の菊池英博氏は「今の大学は腐っている。真紀子大臣よ、頑張れ!」とこう言っている。
テレビで田中真紀子大臣の発言を聞いたとき、私はよくぞ言ってくれた、と拍手を送りたい気持ちになりました。
「大学の数は多すぎる、以前から問題だと思っていた」という発言はその通りで、このことは私のように大学で教鞭を執ったことがある人間であれば、みんな分かっていることなんです。
私は1994年まで東京銀行に勤め、その後、文京女子大の経営学部で13年間、教えました。つくづく思ったのが年々、学生の質が劣化していることです。
この間、少子化が進み、しかし、大学はどんどん増えた結果、ますます、大学は劣化した。
こうなったのは教育の現場に市場原理主義が持ち込まれた結果です。大学をどんどん認可し、ダメなら潰せばいい。小泉構造改革以降、そんな文部行政が行われてきたのです。
人口が増えているときならイザ知らず、子供が減っているのに大学が増えればどうなるか。生徒の奪い合いになり、大学はより簡単に入学させようとする。試験を簡単にし、推薦枠を広げ、その条件も低くする。
米国やドイツの大学は入りやすいが、卒業するのは大変です。日本は誰でも入れるうえに、簡単に卒業させてくれる。単位がなくてもリポートで済むケースもある。そうしないと学生が集まらないからです。
本来であれば、文科省が、そうした教育の劣化の改善に取り組まなければならない。ところが、それを放置し、真紀子大臣がメスを入れようとすると抵抗するのは、大学が彼らの天下り先だからです。
新設大学が認可を受けるには大学設置・学校法人審議会にお伺いを立てるだけではありません。いつの間にか、事務局長や理事に文科省の役人が入ってくる。
彼らは1000万~1500万円くらいの年収を得ている。彼らの天下り先のために大学が増えているようなものです。
新設大学の中には自民党の文教族議員と癒着しているところもある。そうやって、質を伴わない大学が増えていく。
どこも淘汰されず、そうした大学にも国から巨額の補助金が支払われている。誰かがこの構造にメスを入れない限り、日本の大学教育は大変なことになる。感情論のような真紀子叩きは、問題の本質を見えなくさせるだけです。(談)
日刊ゲンダイ 2012/11/9
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