いまIT企業各社は電子図書のための携帯端末の販売を競っているようだ。
こうした状況を見ると今や本は紙から電子に移ってしまったかとも思われるのだが、でもやっぱりまだ紙の本への愛着は強いものがある。
特に文庫本は通勤途上で読むのに都合がいい。小さくて扱いやすいので、例え混雑していてもつり革につかまったまま片手で読める利便性もいい。
ところでこれだけ電子ブックが普及してくると、中にはもう家に蔵書として本を置く必要がない、と言う人さえ出てきている。
こんな意見を聞くと、それもそうだ、とついうなずきたくもなってくる。
しかし少し考えると、だがまてよ。と、それに反対の考えも浮かんでくる。
家の本の話になると、中には置き場に困るほどの本を貯め込んだ人の話を聞くことがある。
蔵書が増えすぎて置く場所がなくなるのである。これは私にも実感としてよく分かる。
私が図書館によく通う理由の一つは新しく本を購入しても本棚が満杯で、これ以上入れるところがないので、購入はしばらくやめて、図書館で読むことにしたのだ。
私の場合は6帖間の壁面一ヵ所が本棚で占領されていて、約2000冊たらずの本があるだけなのだが、これがもっと多い人だと蔵書数も5千冊ぐらいに及んで、一部屋では収納が無理になり、あちこちの部屋に分けて本棚を置いている人もそれほど珍しくはない。
ではこういう人が電子図書が普及してきたからと言って、そうした蔵書を手放してしまうだろうか。
答えはノーである。なぜならばそうした人は紙の本へ強い愛着を持っているからである。
したがって今すぐ読むわけではなくてもほとんどの人はこれから先も長く保存していくに違いない。
これは余談になるが、家に本が沢山ある家庭の子は本好きになる確率が高いといわれている。
家庭の蔵書はそうした教育的効果もあるのだ。
本日紹介するデータはこの家庭の蔵書の国際比較というチョット珍しいデータである。
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家庭の蔵書数国際比較
ISSP国際共同調査によれば、調査対象38カ国のうち最も家庭の蔵書数が多かったのはアイスランドの平均181冊、最も少なかったのはフィリピンの19冊だった。日本は75冊で多い方から26位となっており、多い方ではない。
設問は、「あなたが15歳の頃」(国によっては14歳、16歳の場合もあり)の家の蔵書数をきいており、例えば日本の場合回答者の平均年齢が49歳であるので、34年前、すなわち1975年頃の状況を尋ねていることになる。
蔵書数の少ない国は途上国が多いことから家庭の蔵書数は所得水準に比例している面があるといえる。
ただし、北欧の国の蔵書数が一般に多く、さらにラトビア、エストニア、ロシアなどの蔵書数がドイツ、フランス、英国よりずっと多いところを考え合わせると寒い国かどうかといった要因も働いていると考えられる。
外に出たくないほど寒い日が多い国では読書が重要な生活要素となっているのであろう。
図には家に本がなかった家庭の比率も示しておいた。ほぼ蔵書数と逆比例の関係にあるが、もっともこうした蔵書数ゼロの家庭の比率が高かったのはトルコの23.1%であり、フィリピンの15.7%がこれに次いでいる。
ブルガリアは平均蔵書数が88冊と日本の75冊より多いが、蔵書数ゼロの家庭比率は13.4%と日本の3.4%と比較してかなり多い。台湾も同様の状況にある。こうした国では蔵書の多い家と全くない家とに両極に分かれている状態にあるためである。
なお、ヨーロッパ生活時間調査による読書率との相関図を描いてみると蔵書数の多い国ほど読書率も高いことが分かる。
スウェーデンなどの北欧諸国、エストニアなどのバルト海諸国は蔵書数も読書率も高く、スペイン、フランスなどの南欧諸国は両方とも低くなっている。やはり寒暖の差が関係しているとしか思えない。
それにしても文化芸術の国とされるフランスの読書率がこれほど低いとは意外であった。国民の平均像と一部インテリ階層のイメージとは異なるのかも知れない。
フランスに関しては恋愛率も通念とは異なって低くなっており、案外の国という印象が否めない
調査対象の38カ国は蔵書数の多い順に、アイスランド、ラトビア、ノルウェー、エストニア、スイス、ロシア、スウェーデン、デンマーク、チェコ、ニュージーランド、イスラエル、フィンランド、ドイツ、オーストリア、オーストラリア、韓国、ブルガリア、ポーランド、米国、台湾、スロベニア、ハンガリー、フランス、スロバキア、英国、日本、ベルギー、ウクライナ、スペイン、クロアチア、キプロス、アルゼンチン、チリ、中国、ポルトガル、トルコ、南アフリカ、フィリピンである。
(2012年11月9日収録)
社会実情データ図録より
こうした状況を見ると今や本は紙から電子に移ってしまったかとも思われるのだが、でもやっぱりまだ紙の本への愛着は強いものがある。
特に文庫本は通勤途上で読むのに都合がいい。小さくて扱いやすいので、例え混雑していてもつり革につかまったまま片手で読める利便性もいい。
ところでこれだけ電子ブックが普及してくると、中にはもう家に蔵書として本を置く必要がない、と言う人さえ出てきている。
こんな意見を聞くと、それもそうだ、とついうなずきたくもなってくる。
しかし少し考えると、だがまてよ。と、それに反対の考えも浮かんでくる。
家の本の話になると、中には置き場に困るほどの本を貯め込んだ人の話を聞くことがある。
蔵書が増えすぎて置く場所がなくなるのである。これは私にも実感としてよく分かる。
私が図書館によく通う理由の一つは新しく本を購入しても本棚が満杯で、これ以上入れるところがないので、購入はしばらくやめて、図書館で読むことにしたのだ。
私の場合は6帖間の壁面一ヵ所が本棚で占領されていて、約2000冊たらずの本があるだけなのだが、これがもっと多い人だと蔵書数も5千冊ぐらいに及んで、一部屋では収納が無理になり、あちこちの部屋に分けて本棚を置いている人もそれほど珍しくはない。
ではこういう人が電子図書が普及してきたからと言って、そうした蔵書を手放してしまうだろうか。
答えはノーである。なぜならばそうした人は紙の本へ強い愛着を持っているからである。
したがって今すぐ読むわけではなくてもほとんどの人はこれから先も長く保存していくに違いない。
これは余談になるが、家に本が沢山ある家庭の子は本好きになる確率が高いといわれている。
家庭の蔵書はそうした教育的効果もあるのだ。
本日紹介するデータはこの家庭の蔵書の国際比較というチョット珍しいデータである。
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家庭の蔵書数国際比較
ISSP国際共同調査によれば、調査対象38カ国のうち最も家庭の蔵書数が多かったのはアイスランドの平均181冊、最も少なかったのはフィリピンの19冊だった。日本は75冊で多い方から26位となっており、多い方ではない。
設問は、「あなたが15歳の頃」(国によっては14歳、16歳の場合もあり)の家の蔵書数をきいており、例えば日本の場合回答者の平均年齢が49歳であるので、34年前、すなわち1975年頃の状況を尋ねていることになる。
蔵書数の少ない国は途上国が多いことから家庭の蔵書数は所得水準に比例している面があるといえる。
ただし、北欧の国の蔵書数が一般に多く、さらにラトビア、エストニア、ロシアなどの蔵書数がドイツ、フランス、英国よりずっと多いところを考え合わせると寒い国かどうかといった要因も働いていると考えられる。
外に出たくないほど寒い日が多い国では読書が重要な生活要素となっているのであろう。
図には家に本がなかった家庭の比率も示しておいた。ほぼ蔵書数と逆比例の関係にあるが、もっともこうした蔵書数ゼロの家庭の比率が高かったのはトルコの23.1%であり、フィリピンの15.7%がこれに次いでいる。
ブルガリアは平均蔵書数が88冊と日本の75冊より多いが、蔵書数ゼロの家庭比率は13.4%と日本の3.4%と比較してかなり多い。台湾も同様の状況にある。こうした国では蔵書の多い家と全くない家とに両極に分かれている状態にあるためである。
なお、ヨーロッパ生活時間調査による読書率との相関図を描いてみると蔵書数の多い国ほど読書率も高いことが分かる。
スウェーデンなどの北欧諸国、エストニアなどのバルト海諸国は蔵書数も読書率も高く、スペイン、フランスなどの南欧諸国は両方とも低くなっている。やはり寒暖の差が関係しているとしか思えない。
それにしても文化芸術の国とされるフランスの読書率がこれほど低いとは意外であった。国民の平均像と一部インテリ階層のイメージとは異なるのかも知れない。
フランスに関しては恋愛率も通念とは異なって低くなっており、案外の国という印象が否めない
調査対象の38カ国は蔵書数の多い順に、アイスランド、ラトビア、ノルウェー、エストニア、スイス、ロシア、スウェーデン、デンマーク、チェコ、ニュージーランド、イスラエル、フィンランド、ドイツ、オーストリア、オーストラリア、韓国、ブルガリア、ポーランド、米国、台湾、スロベニア、ハンガリー、フランス、スロバキア、英国、日本、ベルギー、ウクライナ、スペイン、クロアチア、キプロス、アルゼンチン、チリ、中国、ポルトガル、トルコ、南アフリカ、フィリピンである。
(2012年11月9日収録)
社会実情データ図録より
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