ディスレクシアという聞きなれない言葉
皆さんは「ディスレクシア」という言葉をお聞きになったことがあるだろうか。
実はこのわたしもつい最近まで聞いたことがなかったのだが。
この聞きなれない言葉「ディスレクシア」ついて書いた本が図書館の新刊コーナーにあったので、タイトルにユニークさに惹かれ借りて読んでみた。
本の正式なタイトルは「DX型、ディスクレシアな僕の人生」というもので、著者はまだ20代の青年である。
ディスレクシアとは英語で Dyslexiaと綴る。簡単にいえば学習障害の一種であり、失読症、難読症、識字障害、読字障害とも訳される。
1887年にドイツの眼科医ルドルフ・ベルリン(Rudolf Berlin)によって報告され命名された。
著者は小さい頃から、自他共に認めるいわゆる変わった子どもで、そのエキセントリックともいえる特異な行動は少なからず周囲を驚かせたり、困惑させたりしていた。
だが、本人はもとより、母親さえもディスレクシアであることは認識していなかった。
というか、ディスクレシアという名前すら知らず、ただ人より少し変わっているだけだという認識でしかなかった。
著者の子ども時代は、その特異な個性を家族や友人、教師から認められつつも、決して平坦なものではなかった。
それは、本書の核心にもなっているが、小中学校時代、彼に出会った友人たちの評価が見事に示している。
・よく言えば好奇心旺盛、悪くいえば落ち着きがない
・一部の芸術的な面では非常に専門性の高い優れた能力をもっている(絵画とか工作)
・何かをめがけて静かだが、猛烈に突き進んでいくところがある
著者が、学習障害の中核的なタイプといわれるディスレクシア(読字障害)だとはっきり知ったのは高校時代で、留学先の英国の学校で診断されたときである。
さて著者高直氏の家系だが、父方の系譜をたどれば、築城の名手としてその名を知られる大名・藤堂高虎であり、彼が建築家になったのも先祖のDNAのなせる業であるに違いない。
一方、母方の祖父母は外交官と芸術家という華麗な名門一族である。
今の彼があるのは、こうした親族の尽力により、ディスレクシアが広く認知されている英国で建築専門学校への進路が拓(ひら)けたことと、
特に息子と似た特性を持つ帰国子女で、同時通訳の仕事に従事している母親の存在が大きい。
彼女はわが最愛の息子と似た特徴を持つ青年たちを支援するためのNPO法人「EDGE」を自ら立ち上げ、現在はその代表を勤めている。
この母親の深い理解と支援の賜物であったのだ。
しかし、今でもディスレクシアに対するわが国の認識と対処法は欧米に比べて大きく遅れている。
おそらく著者が立派な建築家になれたのは、英国留学での、この障害をはっきり認識した上での確立された優れた教育を受けたおかげであり、
もし彼がそのまま日本にとどまっていたならば、現在の建築家としての姿はありえなかったに違いない。
この本は、ディスレクシアで悩んでいる人々や、その支援者にも勇気と希望を与える価値ある一冊である。
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