野田総理を生んだ「松下政経塾」の知られざる内情に鋭く迫る
この本は長い間松下幸之助氏の側近として仕え、松下政経塾の設立にも大きく寄与した参院議員江口克彦氏と
松下政経塾では数少ない女性塾生であった大学客員教授東海由紀子氏の共著で出版されたものである。
これまで同塾について書かれた書物は数多くあれど、この二人のように直接「塾」に関与した言わば当事者によって書かれたものはほとんどなく
それだけに塾の内情が細部に至るまで詳しく描写されている読者待望の書である。
松下政経塾といえば野田佳彦や前原誠司、玄葉光一郎、原口一博といった民主党の主要な政治家を輩出したことで知られる。
その塾はいま、野田佳彦氏が同塾卒業生としてはじめて総理大臣の座について、人々はますますこの"政治家養成塾"に熱い視線を向けている。
さてその松下政経塾の現状と将来の展望とはいったいどういったものなのだろうか。
だが、この本のタイトルが「松下政経塾憂論」とあるように、総理大臣を出していま勢いに乗る同塾だとはいえ、著者の二人は決して楽観論ばかり述べようとはしていない。
それどころか、現状を憂い、幸之助氏亡き後の後継者の塾の運営方針に苦言を呈したり、また塾生のありように対する批判なども辛口で非常に手厳しいものがある。
とくに東海由紀子氏は、女性ながら鋭い観察力に裏打ちされた明快な理論で
塾生の先輩である野田佳彦氏や、前原誠司氏、あるいは原口一博氏などについて
"口だけ番長"などと揶揄し、その実行力のなさを厳しく批判している。
特に野田佳彦氏については、「松下政経塾の失敗は不況下で更に追い打ちをかける復興増税や消費増税という最悪の政策を打ち出す野田佳彦という作品が証明している」と酷評している。
また、同氏は塾在籍時代の日常生活の様子について次のように赤裸々に綴っている。
「当時は、夜はほとんど毎晩のように、塾生同士でお酒を飲んでいました。カラオケにもよく行きましたが、他の塾生が歌っている時に街頭演説の練習をしている人がいたりして、最初はびっくりしました。
酒盛りしているか議論して喧嘩しているかなんて、幕末の志士みたいだなと思っていました。そのせいかどうか、政経塾は明治維新や幕末の志士が大好きです」
この人は前回の国会議員選挙で惜しくも落選しているが、できれば再度挑戦して是非とも国会の場に上ってほしい”女性ながら気骨のある人”である。
なお、余談として書いておきたいのだが、本をよく読む人は一般的に知的好奇心が旺盛で、文中に使われているボキャブラリーにも非常に敏感であるが、この本にはそれに応えるためか、随所に新鮮な語彙を散りばめている。
たとえばそのごく一例をあげてみると、次のような言葉である。
・レーゾンデートル
・眼光紙背 (がんこうしはい)
・揮毫 (きごう)
・擱筆 (かくひつ)
どうですか皆さん。ご存知でしたかこれらの言葉を。
でも、もし1語でも意味不明の語があっても心配は要りません。ネット検索すれば容易に答えを得ることができますよ。
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