最近「フィッシュストーリー」という映画がが人気になっているという。
「フィッシュストーリー」とはいったいどういう意味があるのだろうか。
字のとおりの「魚の物語」ということではどうもなさそうである。
そこで英和辞典を引いてみると「Fish Story」とは「ほら話」(釣師の手柄話)とある。
また、同義語には「tall talks」(大口)があると出ている。
さらにインターネットサイトを調べてみると以下のようなことも出ている。
「fish story」
ほら話、おおげさな話、つくり話。釣り師が自分のフィッシングを実際より誇張して言いがちなところが語源らしい。
ロシアには、「釣りの話をするときは両手を縛っておけ」という諺があるそうです。両手を自由にさせておくと、両手を広げて示す魚のサイズがどんどん大きくなってしまうからだ、そうです。
何だかおもしろいですね。
ではいったいこのフィッシュストリーの語源はどんなふうに出ているのでしょうか。
それについて探ってみると、
fish story
出典:『Wiktionary』 (2009/07/26 07:21 UTC 版)
語源From the tendency of fishermen to exaggerate the size of their catch
というふうになっていた。
つまり「釣師」というのはとかく自分の釣り上げた魚についてはそのサイズを誇張して言う傾向があり、そのことが発展して「fish story」がほら話の代名詞として使われるようになったというのである。
ではそのフィッシュストーリーの話のうち傑作と思われるものを一つご紹介することにしよう。
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友人のジョージとある村の宿屋で、談話室に入り腰をおろすとそこでパイプタバコを吸っていた老人と自然に会話が始まった。
しばらくして会話が途切れ、私たちがぼんやりと部屋の中を見渡していると暖炉の上の方に取り付けてある剥製の「鱒」の入ったガラスのケースが目についた。
すると老人は私たちの視線を追っかけて、「ああ、あれだね。ちょっとした奴だろう」と言った。
ジョージが重さを聞くと「18ポンド6オンスさ。釣ったのは16年前のことさ。
川に大きな鱒がいると言うんで、じゃあこのわしが捕まえてやろうと思って出かけていって捕まえたのさ。今じゃあまり見ることのない大きさだだね」
そういい終わると老人は去っていった。
老人がいなくなって私たちだけになっても、見れば見るほど見事なその魚にしばらくの間見とれてい
た。
そのとき、ちょっと一杯やりに宿屋へ立ち寄った地元で配達の仕事をしている男がビールジョッキを
手にドアのところまでやってくると私た私たちににつられて魚を見た。
「たいした大きさだね」とジョージが話しかけると、男はビールを口にやってから言った。
「もちろんさ。でも捕まえたときのことは知らないだろう。俺がこの鱒を釣ったのはかれこれ5年ほど前のことでな」と言うのである。
「えっ、じゃあ釣ったのはあんたかい」と私が聞くと
「そうだとも、あの金曜の午後、開門のすぐ下流のところでな。しかも針で釣ったんだよ。26ポンドあったな」
そして5分後にまた別の男がやってきた。
しばらく男は何も話さなかったが、ついジョージが男にかまをかけて「どうやってあの鱒を捕まえたのか話してくれないか」と語りかけた。
(ここでもう私とジョージは地元の連中がその鱒の手柄話を勝手にでっち上げて楽しんでいるらしいと察していたのである)
男は「なんだって、いったい誰がこの俺が釣ったと言ったんだ」と聞き返したが、「いや直感でそうじゃないかと思ったんだ」と答えると「そうだよ。まさに俺が釣ったんだよ」と大いに話に乗ってきた。
男はさらに話を続けて、「釣り上げるのに30分もかかってな、おまけに竿も折られた。家に帰って目方をはかると34ポンドあった」と語った。
(もうここまでくると一種のゲームのようなものだ。みなが暗黙の内に承知しあってやっているのだ)
彼が去ると宿屋の主人が部屋に入ってきた。
連中の話をすると主人は非情におもしろがり、3人は声をあげて大笑いした。
その後主人は客に呼ばれて出て行った。
再びじっと鱒を見たが、見るほどにすばらしいものだった。ジョージが興奮して椅子の背の部分に立ち上がってよく見ようとすると椅子が滑って大きく動きあわててしがみついた鱒のケースが凄まじい音を立てて床に落ちてしまった。
私はビックリして駆け寄りながら「魚は大丈夫だろうな」とあわてて叫んだ。「大丈夫だと思うよ」ジョージはそう言ってまわりを見たが、決して大丈夫ではなかったのだ。
鱒はケースとともに粉々にくだけてしまい、私たちは一瞬、「剥製の魚」が粉々にくだけるとはなんとも不可解だと思った。
しかし実は不思議でもなんでもなかったのである。
その鱒は「石こう」製であったのだ。
Written by Jerome K Jerome(1859〜1927)
高校英語「New Crystal ⅡB」より
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