これは商用でニューヨークを訪れたある中年の日本人男性が巻き込まれた事件であり、タクシー(運転手)をめぐるトラブルである。
あのイエローキャブとも呼ばれるおなじみのニューヨークのタクシーでである。
その男性はケネディ空港からタクシーでホテルまでやってきた。
30数ドルの料金を払うのに男性は100ドル紙幣を渡そうとした。
でも運転手はお釣がないと言ってそれは受けとらず、ホテルのキャッシャーで両替してくるようにと言った。
男性は仕方なく、荷物のことが少し気になったが言われるままキャッシャーは両替に行くことにいた。
あいにくキャッシャーは混んでいて10分ぐらいも待たされた。
ようやく両替が終り急いでタクシーへと戻って行った。ところが降車した位置にはタクシーが止まっていないのだ。
どこか他へ停車位置を移したのかもしれないと思って辺り一帯を探してみたがどこにも先ほどのタクシーの姿はない。
少し不安な気持が頭をかすめたが、でもその時はまだ運転手が荷物を持ち逃げしたなどとは思っていなかった。
どうしたのだろう?不安な気持は次第に増していき、、ちょうど近くにホテルのドアマンが立っていたので聞いてみた。
「10分ほど前にここで止まったタクシーを知らないか?」
するとドアマンは「ああ、先ほどの中南米系の運転手の乗ったタクシーだね。お客さんが降りてすぐに行ってしまったよ」と言うのである。
男性はそう聞いてもまだ事態がよく飲み込めなかった。
「行ってしまったって、あの中には私の荷物が積んであったのですよ」
ドアマンは応えた。
「あーあー。お客さんやられてしまいましたね。荷物を持ち逃げされたんですよ。両替にでも行っている暇に。つい1週間ほど前も同じことがあったばかりですよ。やはりそれも日本人でした。よくあるんですよ。こういうことが」
それを聞いて男性はやっと事態が飲み込めた。
大事な荷物一切合切をタクシー運転手に持ち逃げされたのだ。
心臓が早鐘のように高鳴り、立っていられないほどの衝撃をうけた。
それでもなんとか気を取り直してホテルの中へ入って行った。
私は副支配人のマッコイさんと一緒にこの男性の相談を受けた。
パスポートを始め、現金と高給カメラやその他身のまわりの品一切が入った旅行カバンと無くなったのだ。
幸いスーツのポケットに入れていたトラベラーズチェックと1000ドルあまりのキャッシュだけは無事だったのだが、その男性は「予定を変更して、パスポートの申請がすみ次第日本へ帰る」と肩と落として話してた。
被害額は別の財布に入れてトランクに収めていた現金30万円とカメラなどを含めて80万円ぐらいであった。
ニューヨーク七番街 |
私が勤めていたニューヨークスタットラーヒルトンホテルは客室数が2000室というニューヨークでも有数のマンモスホテルである。
その規模の大きさゆえか、日本人団体客も多かった。
満員になると3000名を越える宿泊客であるが、その客のうち5%ぐらいは日本人が占めていた。
つまり常時150名前後の日本人客がこのホテルを訪れていたのである。
国籍別では本国のアメリカ人の次に多かったようである。
そうした多い日本人客だが、犯罪の多いニューヨークだけに、何がしの事件に巻き込まれることも少なからずあったようだ。
そうしたものについて記憶によく残っている事件についてご紹介することにする。
事件(その1)
これは商用でニューヨークを訪れたある中年の日本人男性が巻き込まれた事件であり、タクシー(運転手)をめぐるトラブルである。
あのイエローキャブとも呼ばれるおなじみのニューヨークのタクシーでである。
その男性はケネディ空港からタクシーでホテルまでやってきた。
30数ドルの料金を払うのに男性は100ドル紙幣を渡そうとした。
でも運転手はお釣がないと言ってそれは受けとらず、ホテルのキャッシャーで両替してくるようにと言った。
男性は仕方なく、荷物のことが少し気になったが言われるままキャッシャーは両替に行くことにいた。
あいにくキャッシャーは混んでいて10分ぐらいも待たされた。
ようやく両替が終り急いでタクシーへと戻って行った。ところが降車した位置にはタクシーが止まっていないのだ。
どこか他へ停車位置を移したのかもしれないと思って辺り一帯を探してみたがどこにも先ほどのタクシーの姿はない。
少し不安な気持が頭をかすめたが、でもその時はまだ運転手が荷物を持ち逃げしたなどとは思っていなかった。
どうしたのだろう?不安な気持は次第に増していき、、ちょうど近くにホテルのドアマンが立っていたので聞いてみた。
「10分ほど前にここで止まったタクシーを知らないか?」
するとドアマンは「ああ、先ほどの中南米系の運転手の乗ったタクシーだね。お客さんが降りてすぐに行ってしまったよ」と言うのである。
男性はそう聞いてもまだ事態がよく飲み込めなかった。
「行ってしまったって、あの中には私の荷物が積んであったのですよ」
ドアマンは応えた。
「あーあー。お客さんやられてしまいましたね。荷物を持ち逃げされたんですよ。両替にでも行っている暇に。つい1週間ほど前も同じことがあったばかりですよ。やはりそれも日本人でした。よくあるんですよ。こういうことが」
それを聞いて男性はやっと事態が飲み込めた。
大事な荷物一切合切をタクシー運転手に持ち逃げされたのだ。
心臓が早鐘のように高鳴り、立っていられないほどの衝撃をうけた。
それでもなんとか気を取り直してホテルの中へ入って行った。
私は副支配人のマッコイさんと一緒にこの男性の相談を受けた。
パスポートを始め、現金と高給カメラやその他身のまわりの品一切が入った旅行カバンと無くなったのだ。
幸いスーツのポケットに入れていたトラベラーズチェックと1000ドルあまりのキャッシュだけは無事だったのだが、その男性は「予定を変更して、パスポートの申請がすみ次第日本へ帰る」と肩と落として話してた。
被害額は別の財布に入れてトランクに収めていた現金30万円とカメラなどを含めて80万円ぐらいであった。
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