いまタクシー業界では驚くほどドライバーの高齢化が進んでいる。
いくら今の日本が高齢化社会の真っ只中にあるとはとはいえ、これほど極端に高齢化が進んでいる業界も珍しい。
構成員のほとんどが50歳以上で、若い人がほとんど見られないという状況なのである。
いったいどうしてこういうことになったのであろうか。その最大の原因はこの業界の構造的な低賃金にある。
そのためいくら新しい運転手を募集しても若い層からは敬遠され、年金などで生活がある程度の保障された定年退職者などの高齢層の応募が多くなっているのである。
こうした傾向は日本だけではなく、お隣韓国でもわが国以上に高齢化は進んでいるようである。
下の記事は最近の朝鮮日報日本語版に掲載された、高齢化が進む「韓国タクシードライバー事情」である。
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ソウル広場で出会った高齢のタクシードライバー
全国のタクシードライバーたちが「庶民のタクシードライバーは、もはややっていけない」と不満を訴え、ストライキに踏み切った6月20日午後のソウル広場。
集会が終わり、閑散とした広場に、炎天下にもかかわらず70歳前後の老人が一人で座っていた。白いあごひげにしわの見える顔が赤くほてっていた。
「焼酎を1本空けた。腰の痛みを少し和らげようとカワハギの干物と焼酎を買ってきた」。多少酔っている様子だったが、目は生き生きとしていた。
そして酒のにおいを漂わせながら、世間話を始めた。
「私は30年間ハンドルを握ってきた。家も新しく建て直したが、息子が事業を立ち上げるというので自宅を担保にして金を借りたところ、事業に失敗し、家を失ってしまった。
今は汚いワンルームに一人で住んでいる。家内とも連絡が取れなくなって久しい。
(1日に)12時間運転しているが、会社にお金を納めるため、手元に残るのはわずかな食事代だけだ。私の人生はどうしてこうなってしまったのか」
腰に巻いた小さなポーチからたばこを取り出し、火を付けると、世の中に対する恨み節を並べ始めた。
「李明博(イ・ミョンバク)大統領は"金持ちのための政治"しかしなかった。
"庶民のため、庶民のため"というのは口先だけで、むしろ庶民を踏み台にした。若者たちは礼儀というものを知らない。娘とほぼ同じ年齢の乗客に、ため口で話し掛けられる」
この日、ソウル広場を訪れた理由の一つは、タクシードライバーたちの素顔に出会うためだった。いつからこうなったのか、タクシーに乗るたびにドライバーの年老いた姿だけが目に入るようになった。
高齢のドライバーが突然増えたような気がしていたが、ソウル広場の集会に足を運んでみると、その考えに間違いがないことを確認した。
早朝4時から1日17時間も運転するという70代前半のドライバーは「今では92歳の老人もソウルでタクシードライバーをしている。
私はあと10年働いてやめるつもりだ」と話した。
腕や足をきちんと動かすことさえできれば定年という制限なしに働ける職業の一つが、タクシードライバーというわけだ。
年を取ってスピードに対する感覚や判断力が鈍ったり、乗客から言われた目的地を忘れてしまい問い返すといったことも多々あるが、食べていくためにはハンドルを手離すことはできない、と高齢のドライバーたちは話す。
退職後、家でぶらぶらしていたが、生活費を稼ぐためにタクシー運転の仕事を始め、カーナビゲーションに目的地を入力して道を探すような初心者の高齢ドライバーが、年々増えている。
車庫にあるタクシーは多いが、ドライバーを志望する若者がいないため、タクシー会社は高齢者を受け入れている。
朝鮮日報日本語版 2012/7/8
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