2010年11月6日土曜日

1970、NewYork city「西97丁目」の思い出(Ⅴ)・地下鉄「セブンスアベニューエキスプレス」

かねてより多くの人からニューヨークの地下鉄についての様々な悪評を聞いていた。

色々あったが、その最たるものは、ホームや車内でやたらと犯罪が多いということである。

特に黒人居住区ハーレムに直結しているこの「セブンスアベニューエキスプレス」が最も危険な路線であるとも聞いていた。

そんな予備知識のせいで、最初これに乗車する時はずいぶん不安を感じたものだ。

でも、怖いもの見たさと言うか、好奇心はそれにも増して強かった。

ニューヨークの地下鉄を一言で表すとすれば、それは「暗い」ということに尽きる。

この暗さが多くの犯罪を生み出す第一の温床ではないだろうか。

それなら照明を増やして明るくすればいいではないかとも思うが、照明もさることながら、全体的な雰囲気とかムードが暗いのであって、ただ明るくすればすむ問題でもないだろう。

ガーガーとすさまじい音をたてて突っ走るその地下鉄のつり革に掴って私はそんなことをしきりに考えていた。

まあ、この問題は、いつかまたチャーリーとでも話し合ってみることにしよう。

電車はローカルとエキスプレスの二種類ある。

ローカルというのは各駅停車、もうひとつのエキスプレスはローカルの約三分の一の駅でしか停車しない急行列車だ。

職場のスタットラーヒルトンは急行の止まるペンステーションからわずか2ブロックのところにある。

だから九六丁目で乗車して、二つ目の七二丁目で急行に乗りかえればいいものを、何故だかそのまま時間のかかるローカルに乗ったままであった。

このころの私にとっては、わずか二十分そこら早く着くより、各駅停車のローカルに乗って、駅の様子とか乗客だとかをゆっくり観察することのほうへ余計に興味があったのだ。

96目から目的地ペンステーションまでは、このローカルで三十五分、いつも三時十五分ごろ駅に降り、それからゆっくり職場へ歩いて行く。

「スタットラーヒルトンホテル」の社員用ロッカールームへ入るのはいつも午後三時半少し前である。

                                                                                                       to be continued

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