場末のカフェ |
ともすれば昼過ぎまでベッドの中へいることもある。
ホテルのフロントの仕事で夜が遅いので、ある程度は仕方ないとしても、なんとかもう少し早く起きなければと、自分ながら思っていた。
昼前に外へ出て、いつものようにコロンブス街の角にあるチャーリーのカフェへと向かった。
この二週間位は二日とあけず通っているので店主のチャーリーもすっかり打ち解けてきていた。
初めて彼の店いったとき、チャーリーは私に向かって「Are you Chainese?」と聞いた。
なんで「チャイニーズ」なんだと、私は少し不機嫌な表情で「No,I'm Japanese」と、やや語気を荒げて応えた。
そんな私を見て、なぜこんな些細なことで「ムキ」になるのだろう?とでもいうふうに、チャーリーはポカンとした顔をして立っていた。
そんな彼を見て、しばらくして私自身もそんな応え方しかできなかったことに対して、何か恥ずかしさのようなものを感じてきた。
考えてみれば、我々日本人だって、西洋人を見ただけで、その国籍までわからないではないか。
それも特に、アメリカ人、イギリス人、オーストラリア人の三者を外見から判別するのは至難のわざだ。
それと同じように西洋人にとっても東洋人、特に日本人、中国人、韓国人を判別するのは、また困難なことなのに違いない。
そう考えていると、なにかチャーリーに対して悪いことをしたような気がして、おべんちゃらのつもりで、欲しくもないチェリーパイを追加で注文したりした。
そしてこれからもできるだけこの店へ来るようにしようと、そのとき心に決めていた。
それからの私はほぼ毎日のように足しげくチャーリーのカフェへ通っていたのだ。
マンハッタンのややアップタウンのはずれにあるこのカフェで、彼との交流はその後ずっと続いた。
チャーリー・バックマン、出身はカナダのモントリオールだとその後聞かされたが、肌の色などで人を分け隔てしない、本当に気のいい白髪で赤ら顔をした中年の男だった。
to be continued
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