小川洋子は書評の名手
紹介されている本は どれも読みたくなる
書評を分かりやすくいうと「本の紹介文」とか「読書感想文」などが適していると思う。紹介文が良いほど、人はその作品を読んでみたくなる。この「みんなの図書室」は文庫2巻に分かれているが、最初の1巻には50冊が紹介されている。ということは50篇の紹介文が載せられているのだが、一篇づつ読んでいくと、どれもが面白そうで、興味がわく作品ばかりで「読んでみたい」と思わせるのだ。要は著者小川洋子さんが本の紹介文が上手な人だからに違いない。読み進めながら、この本まだ売っているだろうか?と、アマゾンの在庫を何度調べたことだろう。
個人的なことでの余談だが、小川洋子氏に関しては、以前、彼女の作品上で、とても貴重な本を教えていただき、感激した記憶がある。それは、藤原てい(作家・新田次郎の妻)著「流れる星は生きている」という作品で、終戦後に何人もの子供を連れて満州から引き揚げてきた体験を綴ったもので、同じように母とともに満州から引揚げて日本に戻ってきた私にとって、筆舌に尽くしがたいほど厳しい「引き上げの真実」を知る上での貴重な書物であったのだ。
その時は、小川洋子という人はジャンルを問わず幅広い作品に目を向けて、読書に精を出す優れた小説家だと、いたく感心したものだ。
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内容説明
次の世代にも残したい文学作品―いわば“文学遺産”と呼ぶに相応しい50作品への思いと読みどころを、読書家として知られる小説家・小川洋子が綴った一冊。森鴎外『舞姫』、角田光代『対岸の彼女』、チェーホフ『桜の園』、ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』といった小説だけでなく、児童文学やノンフィクション、詩集にいたるまで、バラエティに富んだ古今東西の名作を取り上げている。
目次
春の本棚(『あしながおじさん』ウェブスター―ラストに明かされるおじさんの正体は?;『生れ出づる悩み』有島武郎―強力な絆で繋がる、悩める「私」と「君」 ほか)
夏の本棚(『一千一秒物語』稲垣足穂―飛行家を目指した作家が紡いだ幾多の掌編;『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』ポール・オースター編―全米から集められた事実に基づいた物語 ほか)
秋の本棚(『蟹工船』小林多喜二―時代を超えて読まれるプロレタリア文学の代表作;『竹取物語』―再読して初めて知る意外なエンタメ性 ほか)
冬の本棚(『デューク』江國香織―思わず涙を誘う亡き愛犬への想い;『若草物語』オールコット―四人姉妹の毎日が示す至高の理想 ほか)
著者等紹介
小川洋子[オガワヨウコ]
1962年、岡山県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。1988年、「揚羽蝶が壊れる時」で第7回海燕新人文学賞、1991年、「妊娠カレンダー」で第104回芥川賞を受賞。2004年、『博士の愛した数式』が第55回読売文学賞、第1回本屋大賞を受賞。同年、『ブラフマンの埋葬』で第32回泉鏡花文学賞を受賞。2006年、『ミーナの行進』で第42回谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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出典:紀伊国屋書店ウェブストア