2026年7月13日月曜日

書評「ベストエッセイ2025」日本文芸家協会編 光村図書 村上春樹他78名の作品


キャッチコピーには「名文の宝庫! 78篇の珠玉のエッセイ」とあるが、果たしてどうなのだろうか



毎年夏に出るこのシリーズを読むのは今回で確か12冊目になると思いますが、書評の感想文でいつも書いていることがあります。それはベストエッセイと名乗っているとはいえ、掲載された78篇の作品すべてが優れているのではないということです。


それが何故かを説明するのはここでは省きますが、まあ「世の中って万事そんなもの」とでも思ってくだされば結構です。


で、時間を有効に使いたい方向けに78篇の中から私が独断で選んだ秀作15篇をご紹介したいと思います。これこそ、まさに「ベストの中のベスト」と言えます。


ここに選んだ15名の作者で特に注目したいのは高嶋政伸、ERIKO、村上春樹の3氏です。俳優、モデル、作家という陣容ですが、中でも光るのは俳優の高島政伸氏です。


ご存じ高島忠夫、寿美 花代 を両親に持つ、まさに俳優として申し分のない血筋です。


しかし優れているのは俳優の才能だけではないのです。この本に挙げられた「インティマシーコーディネーター」というエッセイを読めば、その優れた文才に驚かされます。その卓越した文章力でこの類まれな秀作が生み出されたのです。


78作品の中の《ベストの中のベスト》

この15名の作品が特におススメです


・松永K三蔵  「押せども引けども雨後菜ぬ扉」小説家

・ERIKO 「世界の日常を旅する」モデル、定住旅行者

・川内有緒 「画面の中の孤島」ノンフィクション作家

・富田望生 「わたしのブギウギ」女優

・ほしよりこ「お屋敷の奥様」漫画家

・西山繭子 「うちの娘です」女優、作家

・早見和真 「その声は誰の声?」小説家

・燃え殻  「僕を魚博士にした祖母の褒め殺し」作家

・高嶋政伸 「インティマシーコーディネイター」俳優

・上坂あゆ美「ひび割れた世の中だけど君だけは」歌人

・小川洋子 「おじいさんと通りすがりの者」作家

・星野知子 「たばこ」俳優、エッセイスト

・村上春樹 「小澤征爾さんを失って」作家

・五木寛之 「愛嬌にない時代」作家

・上間陽子 「若い母たちの振り袖姿に」教育学者




この中で私が推す最も優れた3作品は


No.1   高嶋政伸(俳優)「インティマシーコーディネイター」


No.2   ERIKO(モデル、定住旅行者)「世界の日常を旅する」


No.3   村上春樹(作家)「小澤征爾さんを失って」



高嶋政伸の作品「インティマシーコーディネーター」について


インティマシーコーディネーターという言葉を聞いたことがある人は、おそらく日本では数少ないと思われます。


下の説明でお分かりいただけると思いますが、最近になって映画界でよく使われるようになった専門用語です。


高嶋氏は俳優であるゆえにこれをテーマとして取り上げたのです。専門用語とはいえ、映画は楽しみと安らぎを与えてくれるエンタメとして人々から切り離すことができません。


それ故に今回高島氏がエッセイのテーマに取り上げた「インティマシーコーディネーター」は私たちも関心を持つべき事柄なのではないでしょうか。


高嶋氏は自身が主演したNHKドラマで実の娘に性的暴行を加える父親を演じますが、その娘役の若い俳優を気遣ってこのエッセイを書いているのです。


間違っても父から性的暴行を受けるという演技が後々トラウマとなって残ることがないように、インティマシーコーディネーターの指導と協力を得ながら極めて慎重に撮影の望んでいる姿が実によく描かれています。


特に感銘を受けたのは、暴行の最中に手で娘の口をふさぐシーンがあるのですが、手の感触や臭いで相手の女優が不快な気持ちにならないようにと、自らが薬局に出向き、店員のアドバイスを受けながら良質な除菌のウエットティッシュを買い求めるているのです。


こうした様子もこのエッセイには書かれています。


いずれにしても共演の女優を守ろうが故に行った、インティマシーコーディネーター共同作業についてを、400字原稿用紙10枚以上の長いエッセイを書き上げているのです。


おそらく氏のこの作品には、多くの読者が強い共感をえたものと確信します。



インティマシーコーディネーターとは


(AIによる概要)

インティマシー・コーディネーター(Intimacy Coordinator)は、映画やドラマなどの制作現場で、ヌードや肌の露出、性的な身体接触を伴うシーンを調整・監督する専門職です。出演者の心身の安全と尊厳を守りつつ、演出意図を最大限に実現するための橋渡し役を担います。 [1, 2]

具体的な役割は以下の通りです。

  • 事前調整: 脚本を読み込んで性的なシーンの範囲を確認し、監督の演出意図をヒアリングします。

  • 同意の確認: 俳優と面談し、どこまでの露出や接触が可能か、事前にお互いの境界線(同意範囲)を明確にします。

  • 現場でのサポート: 撮影時にセットへ立ち会い、俳優のプライバシーを守りながら、あらかじめ合意された範囲で演出が行われているか確認・調整を行います。 [1, 2, 3]

この職種は2018年頃にハリウッドで確立され、日本でも2020年頃から本格的な導入が始まりました



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■ベストエッセイ2025収録作品著者(全78名)

青山ゆみこ(文筆家)/ 浅田次郎(作家)/ 浅野忠信(俳優)/ 五木寛之(小説家・随筆家)/

井上荒野(作家)/ 上坂あゆ美(歌人)/ 上間陽子(教育学者)/ 江﨑文武(音楽家)/

蛭子能収(漫画家・タレント)/ ERIKO(モデル・定住旅行家)/ 大川慎太郎(将棋観戦記者)/

小川洋子(作家)/ 小佐田定雄(落語作家)/ 小山内恵美子(小説家・元新聞記者)/角田光代(作家)/ 笠井瑠美子(製本技術者)/ 川内有緒(ノンフィクション作家)/河﨑秋子(作家)/ 川添 愛(言語学者)/ 川村 湊(文芸評論家)/ 岸本佐知子(翻訳家)/ 鯨庭(漫画家)/ 齋藤陽道(写真家)/ 最果タヒ(詩人)/ 柴門ふみ(漫画家)/佐伯一麦(作家)/酒井順子(エッセイスト)/ 佐々木幹郎(詩人)/ 佐佐木 陸(小説家)/ 沢木耕太郎(作家)/市街地ギャオ(作家)/ 柴田一成(京都大学名誉教授)/ 鈴木咲子(花屋店主)/鈴木涼美(作家・エッセイスト)/ 鈴木俊貴(動物言語学者・東京大学准教授)/スズキナオ(ライター)/ 千 宗室(茶道裏千家家元)/ 髙樹のぶ子(小説家)/ 髙嶋政伸(俳優)/天童荒太(作家)/ 富田望生(女優)/ 西山繭子(女優・作家)/

延江 浩(ラジオプロデューサー・作家)/ 信友直子(映画監督)/ 長谷川 宏(哲学者)/蜂飼 耳(詩人)/ 林 真理子(作家)/ 早見和真(小説家)/ 原田宗典(作家)/平松洋子(エッセイスト・作家)/ 平芳裕子(神戸大学大学院教授)/広瀬浩二郎(国立民族学博物館教授)/ 深沢 潮(作家)/ 福井尚子(ライター・編集者)/福田尚代(美術家)/ 藤沢 周(作家)/ 藤村忠寿(HTB「水曜どうでしょう」チーフディレクター)/星野知子(俳優・エッセイスト)/ ほしよりこ(漫画家)/ 穂村 弘(歌人)/ 堀江敏幸(作家)/町田 康(作家)/ 松永K三蔵(作家)/ 三浦しをん(作家)/

蓑田沙希(「古本と肴 マーブル」店主)/ 牟田都子(校正者)/ 村井祐樹(東京大学史料編纂所准教授)/村上春樹(作家)/ 村田喜代子(作家)/ 燃え殻(作家)/ 山極壽一(総合地球環境学研究所長)/ヤマザキマリ(漫画家・文筆家・画家)/ 横尾忠則(美術家)/ 吉田篤弘(作家・デザイナー)/吉峯美和(テレビディレクター・映画監督)/ 柳亭こみち(落語家)/ わかぎゑふ(劇作家・演出家)/鷲田清一(哲学者)