2019年2月8日金曜日

特殊詐欺をなくすために最も必要な条件とは


詐欺師たちの犯罪正当化の論理を崩すことが先決問題

メディアが撲滅のためにいくら啓蒙活動を繰り広げようが、警察がいくら取り締まりを強化しようが、一向に減る気配をみせないどころか、逆に増加している振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺ですが、いったいこれはなぜなのでしょうか。
 
啓蒙活動が盛んで、警察の取り締まりが強化されればたいていの犯罪者は恐れをなして手を引くのが自然の姿であるはずなのに特殊詐欺に限ってはむしろその逆の方向に動いているのです。
 
要するに特殊詐欺にはこれまでの犯罪防止に対する発想は通用しないのです。これはいったいどうしてなのでしょうか。
 
それを考えるためには、まずこの犯罪者たちの心理に着目しななければいけません。つまり犯罪者たちのこの犯罪に対する認識や行動に対する動機づけについてです。
 
いったい彼らは犯罪をどのようなものだと考え、どんな動機のもとに実行しようとしているのか、という点です。物事を成功に導くためには、何事であれ強い動機づけが必要だからです。



特殊詐欺の詐欺師たちには強い動機づけができている

特殊詐欺という犯罪が取り締まり強化をもろともせず一向に減る気配を見せないのは、詐欺師集団の犯罪行為に対する動機づけが強いからです。その強さが、警察の取り締まり力やメディアなどの啓蒙活動の力を上回っているのです。
 
つまり警察の取り締まりやメディアの啓蒙活動の力より詐欺師集団のこの犯罪に対する動機づけの力の方が強いのです。
 
要するに警察やメディアは力関係で負けているのです。力が弱い方が強い方に負けるのは当然のことです。では警察やメディアを負かすほどの詐欺師集団の強い動機づけはいったいどんなものなのでしょうか。


詐欺師たちは犯罪に対してどんな動機付けをしているのか

詐欺師集団はトップダウン方式で成り立っています。組織の最上部には業務の資金を提供する金主が君臨し、ここから業務を運営する組織のに資金が流れます。
 
この組織のトップは詐欺業務に関しての企画案を策定、立案します。つまり詐欺業務のテーマを決め、その推進方法を決めていくのです。

この中には達成目標金額や末端のかけ子(電話業務担当)への仕事の動機づけ方法の策定など、極めて重要な要素が含まれています。
 
これらができたら実際の業務に携わる実働隊の統率責任者を決めます。責任者がれ決まれば、トップが策定した達成目標金額やかけ子に対する動機づけ方法などが丁寧に伝達されます。
 
それが終われば統率責任者はかけ子を統率するリーダーを指導します。この指導業務は極めて重要で、業務の成功のカギを握っているといっても過言ではありません。
 
つまり上部から伝達された金額目標と、それを達成するために仕事(詐欺業務)に対するかけ子に対して強い動機づけを醸成しなければいけないからです。
 
これが成功してこそ、警察やメディアの厳しい監視の目をかいくぐって、詐欺業務を成功へと導いていくことができるのです。



「世の中に金を回してやっている」という詐欺行為正当化のための強力な論理


トップが組織下部へ伝えることで最も大事なのが、この仕事を遂行するための動機づけです。
 
何しろ詐欺という反社会的な犯罪行為を推進していくために人を動かすのですから、厳しさは並大抵のことではありません。
 
かけ子たちは最初こそ時給数千円(万単位もある)という高い報酬に魅せられて動くでしょう。しかし反社会的な行為であるだけに世間の反発は強く、それに耐えきれず中途で挫折する可能性は他のどの仕事より高いはずです。
 
継続できるかどうかはリーダーを含むトップの強い指導力にかかっているのです。
 
では上層部は下部のかけ子に対して、どのようにしてやる気(動機づけ)を生み出していくのでしょうか。
 
それは「世の中に金を回してやっている」という、この仕事に対する正当化の論理を徹底的に埋め込み、かけ子たちの洗脳をはかるのです。


「世の中に金を回してやっている」は詐欺師たちの金科玉条

詐欺集団は「世の中に金を回してやっている」ということを、まるで金科玉条のように強い動機づけとして使っています。これは詐欺行為を正当化するための詐欺師たちの思い込みから生まれているのです。
 
この思い込みが強いからこそ、いかに社会の抵抗が強くても業務を推進、継続していくだけの力が生まれるのです。
 
どんな仕事でも動機づけがしっかりしていれば、仕事は継続でき、成功へ近づけるものです。詐欺師たちにとっては「世の中に金を回してやっている」ということこそ、何にも変え難い強い動機づけになり、1日数百件の及ぶ電話かけという厳しい仕事を継続することができるのです。
 
では「世の中に金を回してやっている」というのは、いったいどのような意味なのでしょうか。
 
これは高齢者が持っているお金は、ただ銀行口座やタンスの中で眠っているだけで何ら社会の役に立っていない。お金は世の中に流通させてこそ役に立つものであり、銀行預金やタンス預金として眠らせているお金は何の意味もない。
 
それどころが高齢者の死後には、身寄りがなければすべて国家に没収されてしまうだけで、こうなる前に我々がそのお金を回収して世の中に回してやっているのだ。というものです。
 
詐欺集団はこの論理を金科玉条のように大事にして、実際に詐欺行為を行うするかけ子の洗脳に利用しているのです。



詐欺師たちの正当化の論理を崩さなければ特殊詐欺は撲滅できない

しかし、冷静に考えてみると、詐欺師たちが「眠っている高齢者のお金を世の中に金を回してやっている」と高らかに宣言しているのはあながち間違った論理だとは思えないところもあります。
 
つまり考えようではもっともらしくも思えるのです。確かにお金を眠らせているだけでは価値を発揮することはできません。
 
それに死んで国に没収されれば何の意味もありません。そうなる前にお金を日の目を見させて世の中に流通させて役立たせようというのです。
 
人をだますことは悪くても、死に金を生き金に変えることは意味のあることと考えられるからです。
 
これが詐欺師たちの目の付け所なのです。指導者は「悪いことではなくむしろ社会に役立つ行為だと」と力説して、かけ子たちを信じ込ませ、これによって動機づけを測っているのです。
 
これでお分かりのように、詐欺集団は詐欺行為を正当化するための強い論理をもっており、それを金科玉条として強く信じ込んでいます。
 
したがって、特殊詐欺を撲滅しようと思えば、まずこれの切り崩しを図ることが先決なのです




0 件のコメント: