2021年10月23日土曜日

過ぎし日の読書記録 ・あの頃はこんな本を読んでいた (シリーズ・その1)


新潮文庫が なんと
240円
 

以前、私のブログ生涯現役日記に「私の脳は私が読んだものでできている」というようなことを書いた記憶がある。

この記述のように、私に限らず人の脳はその形成プロセスで読み物に大きく影響されることは間違いないだろう。

つまり良い読み物を多く読むほど、期待される良い脳が作られるのではないだろうか。

これは例えば小説家を例にとって見ればよく分かる。およそ小説家ほど、読み物をよく読む人種はないだろう。それは読まないと書けないからだ。

つまり小説家とは読んだものを素材にして、新しい作品を生み出しているのである。

来る日も来る日も多くの読み物を読んで、「私の脳は私が読んだものでできている」という状態にしておかなければ、自らが良い作品を生み出すことが出来ないからだ。要するに作家の書く作品はこれまで読んだもので出来ているのに違いない。

小説家に限らず、今は一般人であってもブログなどでなんらかの自分の作品を発表する機会が増えている。人々がそこで発表する作品はすべてその人の脳が作成している。

つまりその人がこれまで読んできこと(見たり聞いたりしたこともあるが)を脳にインプットしておき、それをアウトプットしてものを書いているのに他ならない。

私個人も例外ではなく、現在ブログに書いていることは、ほとんどがこれまで読んできたものを土台にして書いているのが偽りのない実情である。

その手の内を証すために、ここに古い昭和の時代までさかのぼって読んできた本を振り返ってみることにした。

なお、項目の価格欄の値段と現在の書籍価格と比較してみたい。ちなみに昭和53年に買った新潮文庫の値段は240円であった。

今から40年以上前、年齢で言えば30代後半~40代前半の私はこんな本を読んでいました。

 

 

昭和53年~54年】37~38才

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

日本亭主図鑑

井上ひさし

新潮文庫

S53/11

240

未記入

未記入

女性批判の書物であるが、これまでのこうした書物の中では最高傑作ではないだろうか。著者の作品については過去に小説を一冊読んだだけで多くを語れないが、こうも鋭い観察力を持った作家だとは思っていなかった。女性の欠点について綿密に分析し、それに基づいて批判しているだけに大変な説得力を持っている。2~3の箇所で?と思うこともあったが、90%以上は納得できた。エッセイの内容の90%以上で読者を頷かせる書物などそれほど多くないだろうと思う。以前何かの週刊誌で、この人の1ヶ月に購入する新刊書の本題が30万円だというのを見て驚いたが、それほどにこの人はプロ意識の高い勉強熱心な人なのであろう。

 

署名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

永田町・・・・

柿沢こうじ

学陽書房

S54/1

980

紀伊國屋書店

S54/2/12

新人国会議員の選挙戦奮闘記および国会レポートである。読んでいて大変爽やかで、いわゆる「国会議員が書いたもの」という硬い感じがしない。著者の垢抜けたスマートなセンスが十分伺える。このように若くて新しい感覚を持った国会議員が一人でも多く登場してくることが、政治をもっと身近なものに感じさせてくれることであろう。この本で特に参考になった点は、選挙戦も一昔前と比べて随分変わってきていること。例えば選挙参謀にTVディレクターやコピーライターとかの新しい感覚の持ち主をもってきて、イメージ選挙を演出することとか、国会内での与党と野党の馴れ合いの構図と、その複雑舞台裏のこと、などなど。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

人間と金      

デビット・クン

毎日新聞社

S54/1

780

新大阪駅構内

S54/2/13

最近のアメリカの情報を得ようと思って読んでみたが、もちろんその目的もある程度は達せられた。その他にこの著者が現代アメリカ文明を非常に鋭い目で観察していることに気づいた。その見方も、概して文明に対して否定的で、現代アメリカの荒廃と退廃を極端に発達した文明とうまく対比させている。特に航空機汚職にまつわる事については、そのどうしようもない背景がよく描かれている。また今のアメリカで異常に人々を浮かれさせている新興宗教(産業)にも鋭く迫っている。文明とは何か、文明国とは? そしてそこへ住む人々は果たして幸せなのか? これがこの本の一貫したテーマである。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

65万人・在日韓国人

宮田浩人

すずさわ書店

1977/12

1,200

未記入

未記入

最近購入した本で第1刷以外は1冊もなかったと思うが、珍しくこの本は第3刷である。よほどテ-マに興味があったのであろう、定価1200円にもかかわらず・・・。この本は在日韓国人の実態を記したいわば研究書・専門書の類であるので、ことさら読後感などはない。ただ、今まであまり実態を知らなかった在日韓国人に対して少しだけ認識が深まった程度である。ただしこれを書いている時点でまだ半分しか読んでいない。残り半分は統計データ的なものが多いので読み飛ばすことにする。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

島国と日本人

篠田雄次郎

光文社(KB)

1979/2

580

未記入

S54/2/28

この著者の作品は昨年度に「日本人とドイツ人」を読んでかなり感銘したので、この本もつい著者名につられて購入して読んでみたが、やはりと言えばやはりで、2作目は前作を凌ぐどころか、3分の2ぐらい読んだところで、どうもチンプンカンプンなことを書いている箇所に出くわして、イヤになり読むのを断念した。そのチンプンカンプンな箇所とは132~139ページ。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

男の切り札

政次満幸

PHP出版

S54/3

880

神戸Books

S54/3/25

この著者の作品とは初対面。現代ビジネスマンの生き方について説いたものだが、最近この手のものから少し遠ざかっていたので新鮮な気持ちで読むことができた。内容的にはまずまずであり、それほど強く感銘を受けたことはなかった。サンケイ新聞のコラム欄に連載されたというが、この程度のものでも、読者からたいへん反響があったというのが本当だとすれば、産経の読者も甘い。得点は70点。

 

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

人間と肌

デビット・クン

毎日新聞社

S54/3

780

未記入

S54/3/23

前作「人間と金」に続いて著者のこのシリーズにかける意気込みをひしひしと感じながら一気に読み通せた。人種問題で世界のどの国より大きな悩みを抱えた現代アメリカを、やや黒人の立場に身を置いて書いてはいるが、やはり著者自身が中国人であるだけに、いわゆるカラードピープルにしか理解できない細かい心理的ひだにまで深く触れている。この本を読んで一番深く感じさせられたことは、我々日本人も黄色人種であり、アメリカ人などの白人から見れば明らかに劣等民族と見られているのである。人種差別は行けないが、白人社会が依然として優位を保っている現在、今後我々のなすべきことは一体何であろうか。「国境を超え、肌の色を超えた相手へのあたたかい思いやりの心」を持つこと。これしか無いのでは・・・・。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

国際感覚を豊かにする本

湯澤三郎

日本実業出版

1979/3

不明

未記入

S54/4/?

この本はタイトルだけ見ればいかにも昨今ブームになっている「日本人モノ」の類であり、それだけに類書も多そうで、最初はあまり読書意欲が湧いてこなかったのだが、中身をペラペラとめくりながら少し読んでみると内容が大変豊かなようで、つい読む気になってしまった。

著者の国際感覚に対する考え方は、いわゆる日本人が今もて囃している要領としての国際感覚、つまり外国人と仕事をうまくやるための国際社会での身のこなしのスマートさとか洗練された語学力ではなく、真の国際感覚の持ち主とは、そういう技術面はさておき、人間としての思いやりから始まるものである、と力説していることには非常に感銘を受けた。これからは、もうそれほど諸外国の日本に対する評判など気にする必要はなく、日本人自身が相手の立場に立ち、思いやりの気持ちさえ持ち続ければいいのだ。

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