2011年5月16日月曜日

起業、起業と煽り立てるな!・成功率はわずか「1500分の1」

パソコンスクールへ通っていたときのことである。

50代前半と思しき女性受講生に講師がパソコンを学ぶ動機について訊ねていた。

「起業をしようと思っていまして、そのためです」

その女性は躊躇なくそうこたえていた。

何の変哲もないごく普通の主婦らしき中年女性である。

それを聞いた私は 「ふーん、この女性が起業を考えているのか。企業もずいぶん安くなったものだ」 というふうに思ったものだ。

そう言えば最近の本の広告で「元手のいらない会社づくり」とか「ゼロ円でできる自分の会社」などというのをよく目にするではないか。

そんな広告を見たときなどは「元手もかけずにいい会社などできるわけがない」と、私はすぐ否定論を下してしまうのだが。

しかしこうした安易なタイトルをつけた本が出回るのも、このところ不必要に「起業」ということが喧伝されるようになったからではないだろうか。

いったい誰が何を目的にこうしたことを煽っているのであろうか。

はたして起業とはそんなに簡単なものなのであろうか。

手元に「起業バカ」という本がある。

新刊書ではなく、もう随分前に出た本である。

この本の中で著者は近年はびこってきた起業に対する安易な考え方を一刀両断に切り捨てている。

そしてケーススタディとして数々の失敗例を具体的に列挙してその愚について徹底的に解明し、失敗にいたる背景について詳しい解説を加えている。

少し過激な響きもあるこの本のタイトルだが、その目次の一部をご紹介することにする。

「起業バカ」目次

第1章 みんなこうして失敗しました。
第2章 起業ではまる三つのワナ
第3章 「起業後」に待ち受ける誘惑とワナ
第4章 脱サラを食いものにするフランチャイズ商法
第5章 フランチャイズは底なし沼
第6章 いまのニッポンで起業するのは損か得か?
第7章 ベンチャーにはだかる四つの「抵抗勢力」

というものである。

どうですか皆さん。この目次を見てもまだあなたは起業をやろうと思いますか。

さらにこの本のサブタイトルには「成功するのは1500人に1人」とか「世の中そんなに甘くはない。起業の数ほどワナがある」という、恐ろしくなるようななフレーズもついているのである。

冒頭の女性にこのことを教えてあげればよかったのだが、その機会は逸した。

どうか起業をお考えのみなさん、まずこの本を読むことからお始め下さい。

参考文献「起業バカ」渡辺仁著・光文社ペーパーバックス

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