2017年12月28日木曜日

ル―ムインスペクターは Security Anybody Home?と叫んで部屋に入る・懐かしのニューヨーク職場日誌(2)


客室が2,000室もあるマンモスホテルでは


わたしが勤務していたNYのホテルは部屋数が2,000もある市内でも有数の大規模ホテルです。

これくらい大きなホテルになると いかにホテルのメッカNYでもわずか数軒しかありません。

とにかくやたらに部屋数の多いデカいホテルなのですが、部屋数の多さを強調するには訳があります。

それはこの部屋数こそが、わたしがこのホテルでおこなっていた仕事と大いに関係があるからです。

わたしはこのホテルのフロントオフィスに勤めていましたが、職務の一つにルームインスペクション(room inspection)と言われる仕事がありました。

英語表示を見ていただくと分かりやすいかもしれませんが、ルームインスペクションとは当日チェックアウト予定の部屋を検査することです。

部屋を検査すると言えば堅苦しく聞こえますが、簡単に言えば部屋に人や荷物が残っているかどうかを調べることです。

何故それを行うかと言えば、人や荷物の所在を調べて客がまだホテルに残っているかどうかを確認するためなのです。

フロントに寄らずにチェックアウトする客が多い


客室が2,000室もあるホテルとなると、毎日の客の出入りは大変な数に上ります。

もちろん2,000の部屋のうち2泊以上の客もいるわけですから、新しく受け入れる客は3分の2程度の12001400室ぐらいになります。

この程度の部屋の客がいつも入れ替わっていることになります。つまり毎日1,300前後の部屋にチェックイン、チェックアウトが繰り返されているのです。

チェックインはともかく、ルームインスペクションにはチェックアウトの数が大きく関係してきます。

なぜならチェックアウトの数が多いほど対象の部屋が多くなるからです。

このホテルで働き始めて気づいたのですが、日本のホテルに比べて、こちらではチェックアウトの際フロントを通さず黙って出発してしまう客が非常に多いのです。

それ故に出発済みの客の数がつかみにくくなるのです。ルームインスペクションが発生するのはそのためなのです。

フロントに寄らないのはチェックイン時に料金支払い手続きが済んでいるから


何故フロントを通さずチェックアウトしてしまうのかと言えば、料金前払いの客が多く、チェックインの時にクレジットカードで支払手続きを済ましているからです。

つまり料金の清算が済んでおり、あえてフロントに寄らなくてもチェックアウトすることができるのです。

そんな場合でもルームキーがフロントへ戻っていればチェックアウトと判断できるのですが、問題になるのはチェックアウト予定でありながら、まだ鍵が戻ってない場合です。

こうした場合がルームインスペクションの対象になるのです。

もちろん部屋への電話確認で済む場合もありますが、電話しても応答がないことが少なくないのです。

そうした部屋がピックアップされルームインスペクションのリストに記入されるのです。

その数はだいたいチェックアウト予定数の1015%程度が普通ですが、出発予定数が1300室にも及ぶと、その数は150200室に達します。

これだけ多くの部屋がルームインスペクションの対象になるのです。

このルームインスペクションに当たるのが、ルームインスペクターと呼ばれるフロントオフィスのスタッフなのです。

ルームインスペクターはなぜSecurity Anybody home?と言っ
て部屋に入るのか


上のタイトルにあるSecurity anybody home?ですが、securityを除いた、Anybody homeだけだと意味が分かる人は多いと思います。

つまり、誰かいますか?という意味です。

では、その前のsecurityはどうなのかと言えば、こちらは安心とか安全という意味を表します。

したがって全体的には、「安全ですから心配いりませんよ、どなたかいますか?」というような意味になります。

前にsecurityをつけるのは、とつぜん外来者の訪問を受けた客が驚かない(怖がらない)ようにするためなのです。

かくしてこの任務にあたるルームインスペクターは「セキュリティ エニボディ ホーム?」と大声で叫びながら150200もの客室を巡回することになるのです。


ルームインスペクションでは対象客室の8割程度は空っぽ


一言でいえばルームインスペクションは体力勝負のきつい仕事です。

それもそうでしょう。4階から25階までの20フロア―以上にまたがる150~200にも及ぶ客室を1室づつスピーディにチェックして廻らなければならないからです。

これを重労働と呼ばず何と呼べばいいでしょうか。

それも黙って廻るのではなく、Security Anybody home?と大声を張り上げながら、なのです。

この声を100回以上張り上げるだけでも相当なエネルギーを消費するのです。


こうして巡回した結果がどうかとちら言えば、対象の部屋のうち8割は空っぽ状態です。

つまり人も荷物も残っておらず、デスクやベッドの上あたりにルームキーだけが放置されていることが多いのです。

残り2割には、まだ客が寝ていたり、人はいなくても荷物だけが残っているような状態です。

こうした客はチェックアウト時間をやり過ごしたか、予定を変更して滞在を延長する人たちです。

こうした状態をどう処理するかと言えば、持参したリストに、空っぽの場合はVacantの頭文字のⅤの字、人や荷物がまだ残っていればOccupaidのOの字を記入します。

記入を終えたリストに目をやると、たいていの場合は、ずらりと並んだVの字ばかりがやたら目につきます。












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