2018年7月18日水曜日

小説家とエッセイ ・ 良い小説が書けてもエッセイも上手とは限らない


色々な作家のエッセイを読んでみたが


このところの私の読書傾向ははっきり言ってエッセイに偏っています。こうした傾向が良い悪いは別にして、なぜだかエッセイ作品ばかりに目が行くのです。
 
きっかけは浅田次郎のエッセイを読み始めたことです。氏の作品を1冊読み、非常に気に入ったので次の作品を読み、気が付いたら連続で6冊読んでいました。
 
その6冊がすべて優れていたからでしょうか、すっかりエッセイに魅了されました。これがエッセイにはまったきっかけです


浅田次郎の次に読んだのはエッセイのアンソジーです。まず最初はは文芸春秋から出ている「直木賞受賞エッセイ集成」です。
 
れには直木賞受賞作家36人の各々が20枚の伝記を綴っています。
 
これがまたまた力作ぞろいで2~3の作品を除いてすべてが素晴らしい作品ばかりなのです。
 
さすがが直木賞受賞作家の作品と、すっかり感心してしまいました。

 
浅田次郎の作品と直木賞受賞エッセイ集成にすっかり感銘を受けた後、今度は女性作家のエッセイを読んでみました。
 
しかし、残念ながら今回は一部を除いて良い作品が少なく、これまでのような感銘は受けませんでした。でもかわりに気づいたことがありました。

 

7人の女性作家のエッセイ集を読んで分かったこと

 

まず手始めに読んだのは、好きなベテラン作家の一人である山田詠美の作品です。
 
数多くある氏のエッセイ集からタイトルが目立った「フォーユニークガール」という作品を選びましたがその選択にミスはなく、タイトル通りのなかなかユニークな面白い作品でした。
 
その次には阿川佐和子の「バブルのタシナミ」という作品を読み、これもまずまず気に入り、エッセイに対する興味はさらに増しました。
 
その後ブログが本になった、素人作家の「イギリス毒舌日記」という作品を読みましたが、それも非常に気に入り、これによってさらにエッセイを読み続ける意欲が増しました。
 
ところが、この次からが問題なのです。

直木賞受賞の作家ならエッセイも上手なはず、と思って、次は立て続けに3人の直木賞受賞の女性作家のエッセイ集を読んでみました。
 
名前をあげると三浦しをん、江國香織、角田光代の3名です。3人とも映画化されたベストセラーの小説を出している人気作家です。
 
そんな作家ならエッセイも優れているに違いないと思って読んだのですが、これが大きな見込み違いだったのです。要するに3冊とも期待外れで面白くなかったのです。
 
なぜなのだろう、と考えてみたのですが、結論として出たのは、小説が上手な作家だからと言って、エッセイも上手とは限らないということです。
 
もちろの何編かの数が少ない範囲だと、気合を入れた書いた作品には良い作品もあるでしょう。それが証拠に、前述の「直木賞受賞エッセイ集成」に出てきた角田光代氏と江國香織氏の作品はそれなりに力作で良い評価ができる作品でした。
 
直木賞受賞記念のエッセイということで、気合を入れた書いたからに違いありません。
 
しかし同じエッセイでも1冊のエッセイ集となれば話は違います。
 
1冊分のエッセイともなれば、量は半端ではありません。少なく見積もっても30~50ぐらいのタイトルで、異なったテーマの記事を書かなければいけないのです。
 
これだとネタ探しだけでも大変です。いくら作家とはいえ、これだけの数を満たすテーマを見つけるのは大変なことです。それゆえに無理をするのです。

つまり
 
・エッセイとしての話題性が乏しいもの
・日常的過ぎて読者の関心が呼べないもの
・過去に書いたことのあるテーマ
 
などを題材に使ってしまうのです。
 
これでは書く方も気合が入らないためおざなりな作品になってしまう可能性がありますし、そうした作品が読者の共感を得られるはずがありません。

 

小説とエッセイの才能は別

 

でも小説が上手な作家が、なぜ読者が共感しないつまらないエッセイを書くのでしょうか。
 
理由については上にも書きましたが、究極の結論は、ズバリ、小説とエッセイの才能は別だからではないでしょうか。
 
つまり、上手なおもしろい小説を書ける作家とはいえ、読者を満足させる良いエッセイを書けるとは限らないのです。
 
このことに気づく前は、良い作品を出している作家なら、エッセイも上手だろう、と思っていました。
 
そう思ったのは前述のように浅田次郎のエッセイがことごとく素晴らしかったからです。
 
連続して6冊読んだエッセイ集はどれも優れており、非の打ちどころがなかったのです。
 
それゆえに、ベストセラーになるような小説を書く作家ならエッセイも上手だろうと信じて疑わなかったのです。
 
でもその考えは間違っていました。その理由については上にも書きましたが、まとめると次のようになります。

小説の才能とエッセイの才能はことなる  

小説、エッセイともに才能のある作家は少ない

エッセイはテーマが大切だが

    ・エッセイの才能の無い作家はテーマ選びが上手でない

    ・手持ちのテーマが少なく、ネタが続かない    

    ・日常的なありふれたテーマが多くなり読者の関心を呼ばない

日常的なことをテーマにした場合の切り口に問題がある

実力以上書きすぎてネタが枯渇している


女性作家7名のエッセイ集の評価(独断による)

   作家名           作品名        評価

  


 

ウィルトモ(素人)  イギリス毒舌日記     A 
 
 







 


 
 
阿川佐和子    バブルのタシナミ      A
 
 

  
 
 
 
 
 
 
 
山田詠美     4ユニークガールズ     A
 
 

 
 
 
 
 

 



三浦しをん    お友達からお願いします  B

 
 

  
 
 
 
 
 
 
 
角田光代     世界は終わりそうにない   B
 
 

  
 
 
 
 
 
江國香織     柔らかなレタス         B
 
 

 
 
 
 
 
 
佐野洋子     問題があります        B

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