2019年7月29日月曜日

この本がユニークだ ・「泥酔文学読本」 七北数人・著 春陽堂書店

 
 
(出版社による紹介文)
酒と文学はよく似ている
陶酔を誘う文学と酒は、ともに摂取した者を別世界へ連れて行ってくれる。
酒も文学も、その世界の心地よさにハマってしまうと、抜け出せなくなる。
だから、読み続けるしかない、飲みつづけるしかない……
古今東西の文学作品に描かれてきた、様々なる酒と多様なる酔い方を紹介。
すべての文学と酒愛好家に送る珠玉のエッセイ! !
 
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「泥酔文学読本」というタイトルが気に入った
 
まず「泥酔文学読本」というこの本のタイトルがとても気に入りました。文学に酒はつきもので、これまで酒と文学をテーマにした作品はゴマンとありますが、この作品では単なる酒ではなく泥酔と表現して、それを文学にひっかけたところが特に魅力的に感じるのです。
 
泥酔と聞けばなにか破天荒な匂いが感じられ、型破りでユニークな無頼派作家が想像されます。
 
そうした予想にたがわず、この作品の冒頭で取り上げられているのは無頼派作家として筆頭に上げるべき坂口安吾です。
 
坂口安吾は太宰治と並ぶ代表的な無頼派作家と呼ばれていますが、二人に共通するのは無類の酒好きな点です。
 
とりわけ安吾は酒にちなんだ随想作品を多数残していますが、そうした作品の一つに「酒のあとさき」http://aozora.binb.jp/reader/main.html?cid=42852(青空文庫)があります。
 
この作品の中で酒を飲む理由について『なぜ酒をのむかと云えば、なぜ生きながらへるかと同じことらしい』と語っています。
 
このようにはっきり断言していることからも、いかに酒好きかがよくわかります。
 
この随筆には同じように酒好きな作家である中原中也や尾崎士郎なども登場し、文壇バーなどでの交流が語られています。
 
安吾と酒については、姉の嫁ぎ先である新潟県松之山町(現十日町市)について語らぬわけにはいきません。この地の村山家は、安吾がこよなく愛した「越の露」という酒の蔵元だからです。
 
 
坂口安吾に次いでこの作品に登場する作家たち
 
この作品に登場する人物は国内だけでなく海外の作家も含む豪華な顔ぶれになっています。
 
これだけ多くの作家の酒にちなんだエピソードが綴られているのですから、想像しただけでも胸が騒ぎます。
 
五十音順
赤江瀑、赤塚不二夫、亜樹直、芥川龍之介、阿刀田高、アポリネール、アンダソン(シャーウッド)、アンデルセン、アンブローズ・ビアス、飯田蛇笏句、池澤夏樹、石川桂郎、石田波郷、色川武大ヴァーリイ(ジョン)、ヴァレリー、宇能鴻一郎、大藪春彦、岡本かの子、小川未明、開高健、甲斐一敏梶井基次郎、片岡義男、香山滋、北方謙三、北原白秋、グリーン(グレアム)、ゲーテ、源氏鶏太、古今亭志ん生小酒井不木、コッパード、小松左京、コルタサル(フリオ)、坂口綱男、佐藤垢石、沢木耕太郎サン=テグジュペリ、司馬遼太郎、澁澤龍彥、杉浦日向子、スティーブンソン(RL)、ダール(ロアルド)
高村光太郎、太宰治、田中康夫、谷崎潤一郎、種田山頭火、チュツオーラ(エイモス)、筒井康隆デフォー(ダニエル)、中井英夫、中里介山、中島らも、中原中也、中村彰彦、ニエミ(ミカエル)萩原朔太郎、原田禹雄、火野葦平、フィニイ(ジャック)、藤枝静男、藤本義一、ブラウン(フレドリック)ブラッドベリ(レイ)、プルースト、古谷三敏、ヘンリー(O)、星新一、牧野信一、三浦哲郎、水谷準宮沢賢治、宮本百合子、村上春樹、莫言、森鴎外、山川健一、山川方夫、山本昌代、夢枕獏、吉田秋生吉田健一、吉行淳之介、四方屋本太郎、ロート(ヨーゼフ)、若山牧水
 
【目次】 これを見るだけでも胸が躍る!

I 泥酔する作家たち
坂口安吾の酒
べらんめえ文学論
青春のように悲しいビール
電気ブラン今昔
酒中花と水中花
ダダイスト辻潤の放蕩
スペインの酒袋
宿酔日和
酒の音色
末期の水
風狂の吹き溜まり
生きいそぎの記
妄想の酒場
バーボンにはピスタチオを

II 物語のなかのアルコール
村上春樹の酒
サバイバルはラム酒で
ヤシ酒が飲みたい!
夕焼け色のワイン
シャンパン・バブル
オハイオ州ワイン町
マッコリこわい
不老不死の酒
シャンパンと三鞭酒
雪見酒
鶴血酒
珠玉探求
ウイスキーボンボン
XYZは最期の酒

III 泥酔の文学誌
聖なる酔っぱらいの伝説
楽園へのいざない
バーは異界への入口
魔人のいる店
カフェ・カクテール
悪魔の酒
少年と酒とロック
おそるべき中国文学
壺の中のユートピア
猩々ども!
酔わせて倒せ!
酔って候
骨酒ヒレ酒スルメ酒
シネフィルの呪文
別れに乾杯!
テイスティングは超能力か
白酒と青酎
ウイスキー坊主
硬派なナンパ本

IV 酩酊のその先へ……
付喪神の戯れ
酒器愛玩
酒虫の秘技
菊の精の契り
鏡のある酒場
人魚は酒が好き
髑髏盃
海も川も酔っぱらう
人を呑んだ話
恐怖の宴会芸
河童の酒宴
赤い酒の霊力
終わりの日々を……
α次元にいる智恵子

あとがき
作家・作品名一覧
 
 
(一緒に読んでみたい酒にまつわる作品)

 
日本の名随筆11 「酒」 作品社
 
【内容目次】
赤塚不二夫  紹興酒とお茶割り
内田百閒  おからでシヤムパン
宇野信夫  清正という酒
大岡昇平  斗酒四十年
開高健   地球はグラスのふちを回る
金子兜太  酒の功徳
上林曉   野の酒
北杜夫   出来たてのテキーラを試飲する
草野心平  居酒屋でのエチケット
後藤明生  ウォトカの旅
小林秀雄  酔漢
坂口安吾  ちかごろの酒の話
坂口安吾  酒のあとさき
佐多稲子  酒少々の私のたのしみ
沢木耕太郎 葡萄酒と心意気
高橋和巳  酒と雪と病
武田泰淳  杜甫の酒
田中小実昌 ヨッパライニ作法ナドアルモノカ
田辺聖子  私の酒と肴
田村隆一  越の寒梅
檀一雄   ニゴリザケ濁れる飲みて
辻嘉一  
戸板康二  酒場の少女
中野重治  禁酒記
野坂昭如  わが焼酎時代
野坂昭如  酒歴二十数年の弁
萩原朔太郎 夜の酒場 [巻頭詩]
富士正晴  伊東静雄と酒
堀口大學  詩の味・酒の味
堀口大學 
堀口大學  酒の飲みよう
丸谷才一  バーへゆく時間
丸谷才一  ハムレット異聞……
森崎和江  焼酎
安岡章太郎 トラ締まり法
山口瞳   ウイスキー
吉田健一 
吉田知子  邪道酒
吉原幸子  ビールをのむ-若き女性たちへのアドバイス
吉原幸子  ヤケ酒・ウカレ酒
吉行淳之介 葡萄酒とみそ汁
 

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