2020年5月7日木曜日

小説新人賞の応募者にぜひとも伝えたいこと(4)


予選通過率が10%程度でしかないことをしっかり認識しておこう

このシリーズ(3)でも書きましたが、メジャーと呼ばれる文藝春秋、小説現代、集英社などの出版

社が主催する小説新人賞の応募者は1回の募集につき、だいたい1000~1500編程度の作品の応募があります。

この中で予選を通過するのは1割程度の100~150編ぐらいでしかありません。これで分かる通り小説新人賞応募者を待ち構えているのは狭くて厳しい門なのです。

これを冒頭に書くのは、応募者にこの数字をしっかり認識して現実をよく踏まえておいてほしいからです。

つまり、こうした現実を知っておかないと落選した時のショックが大きく、次の応募のモチベーションを失ってしまうことにもなりかねないからです。

でも応募者の90%もの人が落選という事実を知っておけば、落選の際のショックも小さくてすみ、諦めもつきやすいのではないでしょうか。

それだけでなく《もう一度挑戦してみよう》という意欲も湧いてくるのです。



応募後に心しておくべきこと

これから述べることは非常に大切なことですから是非とも覚えておいて実行に移してほしいことです。

前項で書いたように小説新人賞に応募しても、応募者の90%は一次審査でふるい落とされてしまいます。

何事に於いても落選にはショックが伴います。中でも小説新人賞応募での落選のインパクトはかなり強いと言えるのではないでしょうか。なぜなら、小説作成には長い日時がかかるからです。

作品の長さにもよりますが、短くても1ヶ月、長編だと数ヶ月~1年以上に及ぶこともあるでしょう。

これだけの期間、頭をしぼりながら苦闘して生み出されるた作品です。それが一次予選であえなくボツになってしまったらショックを受けるのは当然のことです。

それに、審査結果は予選通過作品が月刊誌で発表されるだけで、落選に対しては何の通知や連絡もありませんし原稿も返却されません。

こうした冷酷とも思えるような厳しい現実をしっかり認識しておくことによって、なるべくショックを小さくし、気を取り直して次の応募に備えてください。



審査結果が発表される前に2作目を執筆する

小説新人賞は一次審査を通過するのは10%程度の狭い門です。ということは一度の応募だけで一次予選を通過するのは難しいかも知れません。

確率から考えても応募回数が多いほうが予選通過の確率は高くなるに違いありません。1回の応募だけで済ますのでなく、2回、3回と応募回数を増やしていくのです。

幸いターゲットにする募集媒体は少なくありません。例えば1回目の応募が文藝春秋のオール読物新人賞だとすると、2回目は小説現代の新人賞、3回目は集英社の小説すばる新人賞というふうに対象を変えていくのです。

こうして次々応募していけばいいのですが、大事な点は、1回目の応募から次の応募までの期間です。

大切な点は1回目の応募が終わると、その結果発表がある前に2回目の応募を終えることです。

理由は、1回目の審査結果を待ってからでは、運悪く落選した場合は、ショックからモチベーションを喪失して2作目の執筆の意欲を失う恐れがあるからです。

3作目も同じです。2作目の結果発表の前に執筆するのです。

この方法だと、たとえ前の応募作品が落選しても、その発表前なら執筆意欲を維持できるのです。


ターゲットは一つでなく複数の方がいい

いま小説新人賞の数は少なくありません。もちろん作家へ直結するようなメジャーな賞に限って言えば数は限られますが、準メジャーやネット小説も含めればおそらく十指では間に合わないほどの数があります。

もちろんメジャーだけ狙って応募を続けることも悪くはありませんが、準大手やネット小説も意識すれば、それだけターゲットは増えてくるのです。

それに応募媒体によって選考基準や作品のテイストなどが異なってきますから。その分予選通過確率が高くなります。

1回の応募で落選しても、すぐ諦めるのではなく、ターゲットを変えて、2回、3回と応募を重ねていくことが大事なのです。

応募者の中には10回以上予選で落ちても、それでもへこたれずに応募を繰り返している人もいるのです。


経験者が語る大事なこと・たとえ予選通過しても油断してはいけない

上の項では落選した場合のことばかり例を上げて書きましたが、ここではその逆の場合、つまり運良く10%の壁を破って予選通過した場合のことを書いていきます。

人間誰しも、物事が自分が思ったように運べば気を良くし自信もつきます。それも1回だけではなく、2回、3回と連続してうまく行けば、喜びようも半端でなく、ともすれば有頂天になるほど喜ぶかも知れません。

その結果、鼻高々になり舞い上がってしまうかも知れません。実はこう言っている筆者がかつてその状態になったのです。

それは人生で始めて応募したオール読物新人賞で、みごと予選通過しただけでなく、その発表前に応募した小説現代新人賞では1次予選はおろか2次予選まで進み、さらに3回目に応募した小説すばるが、またまた1次予選を通過したのです。

いずれも応募作品は1000~1700編という狭き門を突破したのです。そんな厳しい戦線で、初めて応募した1回目から連続3回も予選を通過することができたのです。

しかもいずれも入賞すればプロ作家へ直結というメジャーな出版社のものばかりなのです。これを喜ばないはずがありません。それどころか、すっかり舞い上がったのぼせてしまったのです。その結果はどうなったでしょうか。

苦労して書きあげた小説とはいえ、三作が連続してすべて予選を通過するなどとはまるで夢のように思えたのです。

そして、これだと小説家になるのも間もないことだ、というような慢心めいた思いが胸をよぎったのです。

それだけではなく、作家になるのがこんなに簡単なことなら、何も急ぐことはない、という考えが芽生えてきて、その後しばらくは何も応募しないだけではなく、小説を書くことすら止めてしまったのです。

そして気がつけば年月だけ経て、いつの間にか小説家になる夢は消えてしまっていたのです。

こうした経験があるからこそから言えることですが、たとえ応募作品が1度や2度予選を通過したからと言って、決して気を緩めてはいけないのです。

小説家への道は新人賞の予選を通過してからが更に厳しくなるのです。

0 件のコメント: