2021年11月13日土曜日

あの頃はこんな本を読んでいた (シリーズ・その3)昭和56年頃(40才~)

 


当時は今と違って本屋が多かった
 

いま私が本を買う場所は決まっていて、JR駅構内ショッピングセンターにある「J」という大型書店だけです。理由は簡単で、市内にこの店以外に本屋らしい本屋がないからです。

なんとも不思議なことなのですが、人口50万人にも達する地方の中心都市なのに、品揃いの良い本屋はここしかないのです。

でも今から15年前ぐらいまでは駅前商店街だけで6~7軒もの本屋があったのです。

今でもはっきり覚えていますが、それらの店は、新興書房(2店舗)、誠心堂書店(2店舗)、三耕堂書店、さらに洋書の取り扱いで有名な丸善の姫路支店。この他に確かもう1店あったと思いますが残念ながら名前は忘れました。

これらの店、数の多さだけでなく、各々の店の規模もかなりのもので、例えば新興書房駅前店は4フロアー、誠心堂書店は2フロアーにそれぞれ品揃の良い広い売り場を備えていました。

それがどうでしょう、規模が抜群に大きくなったとはいえ、今ではたった1店だけになってしまったのです。

これを衰退と言わず他になんと言えばいいでしょうか。誠に寂しい限りです。


昭和56年頃(40才~)読んだ本 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

ドウソン通り21番地

木村治美

集英社文庫

83/

未記入

未記入

S56/8/1

「たそがれのロンドンから」で大宅壮一ノンフィクション賞を受けている著者の近作である。いわゆる才女と呼ばれる人から一般的に連想されることは、まず第一に男勝りの気の強さということであろうが、このエッセイを通して浮かび上がる著者の女性像はそれとはまったく正反対の「細やかなことによく気のつく、優しくて女らしい人」といった印象なのである。職業婦人として2児の母として、日常生活を取り巻く様々なことをテーマとして取り上げ、女性らしいナイーブさをもって、やさしく読者に問いかけている。洗練された格調のある文章で綴られた好エッセイである。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

花より結婚きびだんご

林真理子

角川文庫

84/

未記入

未記入

S56/8/3

この人は小、中、高を通してすべて主席で卒業したらしいが、前の書評にも「非常にコンプレックスが強い人」と書いたこともあるが、29歳で「よくもまあ」と思わっせるぐらい心のヒダの多い人であり、「抜群に頭のいい女」という感じでもある。前回の「夢見る頃を過ぎても」に引けを取らない内容で、とにかく面白い本である。この本を読んで強く感じたことが一つある。それは「説得力に最も必要なことはボキャブラリィの豊富さである」ということ。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

見える学力見えない学力

岸本裕史

大月書店

81年

未記入

未記入

S56/8/6

子供の学力に悩む親たちへの指導書である。こうした本の類書は多いが、その中でこの本は見逃せない好著であると思う。小学校の教師として現場での長年の経験から、いわゆる「低学力」の背景について様々な角度から問題を取り上げている。そしてそれに対する処方箋を一つづつ丁寧にあげている。この本を読むと、なにか「落ちこぼれ」とか「非行生徒」とかはすべて親がつくり出しているようで、空恐ろしい気さえしてくる。本をよく読み子どもはなぜ学力が高いか。TVはなぜ子どもに悪い影響を与えるのか。長男はなぜ頭がいいのか。こうしたいわゆる学力の背景にあるもの、つまり「見えない学力」ということに著者は取り組み、それに着眼するよう父母に強く訴えている。「見える学力」をアップするには、まずは「見えない学力」をアップしなければいけない。この点を著者は力説したいのだ。子どもを持つ親の必読の書である。

 

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

新メディアウォーズ

(一般産業論)

田原総一朗

文春文庫

85/

未記入

未記入

S56/8/8

来たるべき高度情報化社会に備えて、日本の産業はどのように対応しようとしているのか、その対策についての代表的なものを著者は綿密な取材活動を経て読者に広く紹介しようとしている。いわ

ゆるニューメディアに関しての書物は目下ブームになっている感があって、さながら百花繚乱の様相を呈しているが、ここ数年一貫してこのテーマを追い続けている著者だけに、他の人のものに比べて、やはり一日の長があるように思う。これからの時代に生きる者にとって、この本に取り上げられているニューメディアに関する様々な用語、まずはこれを覚えていくことが、個人として、この社会へ対応していくスタートになるに違いない。

(用語例)

INS・・・Information Network Service

VAN ・・Value Added Network

CATV・・ Cable TV

POS・・・Point of Sales

※ 現時点での日本での高度情報通信システムを持っている会社

    日本警備保障、艇庫データバンク

※ 高度情報化社会のことを情報資本主義社会ともいう。

 

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

知的対応の時代

渡部昇一

講談社文庫

83/

未記入

未記入

S56/8/13

この本はエッセイというより評論集と言って方が適切だと思う。独断かもしれないが、エッセイとは軽い読み物だと思っている。この本は軽い読み物ではないどころか、むしろ重厚でしかも学術的(学問的)な要素をふんだんに含んだ評論集である。渡部昇一という人は現在の日本における代表的知識人の一人なのであるが、この年代の人(1930年生まれ)の中でもおそらく五本の指に入る人に違いない。専攻は英語学ということだが、あらゆるジャンルに渡っての幅広い知識は驚くべきものがある。それも広く浅くではなく、深く広くなのである。現在53歳で学者としてはまだ若く、今以上にこれから先の活躍が益々期待できる人である。1980年代の日本の基調なブレーン「渡部昇一」に喝采!!

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

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読了日

次に来る衝撃

竹村健一

青春出版社

83/

未記入

未記入

S56/8/15

いっときほどでもないがこの超有名人である著者の作品を読むのは久ぶりである。相変わらず大変なペースで本を出し続けているようだが、これだけの数のものを出しながら、一向に内容が薄くならないのは、やはりこの人の並外れて優秀な頭脳のおかげに違いない。この本は著者が最近翻訳出版したネイスビッツという人の「メガトレンド」という本の解説書とでも言っていいだろう。彼は以前マクルーハンというあめりかの学者の考えに強く影響を受けて、その考え方をいろいろな本を通じて日本人に紹介してきたが、そのマクルーハンの次に彼が影響を受け、人々に紹介しようとしているのが今回のネイスビッツなのである。この本の内容は、今激しい勢いで押し寄せてきている高度情報化社会についての解説であり、予見であるのだが、しきりにこれからは「頭脳の時代」であるということを力説している。日本には未来を予見する学者というのはあまり見当たらないようだが、さしずめ竹村健一さんあたりが、我が国における「未来予見学者」として最有力の人であるのかもしれない。

 

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

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読了日

誰も書かなかったソ連

鈴木俊子

文春文庫

79/

未記入

未記入

S56/8/18

文庫版は最近出たばかりだが、新刊書としてはもう6~7年前に出されており、その際、大宅壮一ノンフィクション賞を受けている価値ある作品であるというのに、これまで読んでなかったのは読書家を自認する者としてはどうしたことだろう。ソ連に対してこのところあまり興味を持っていなかったせいだろうか。それはともかくこの本もまた賞にふさわしく大変良い作品である。この著者は文章力という点ではそれほど卓越したものはもっていないが、レポーターとしては大変優れており、この種のものに読者が期待する点、つまり何が知りたいのかということに対しては、かゆいところに手が届くほど克明に書かれている。この本を読んでいると「鉄のカーテン」を引いた巨大な社会主義国家であるソ連について随分と無知であり、それだけに書かれている内容の一つ一つがいかに資本主義社会の日本と違うのかと、驚かされるばかりである。今のソ連が良いか悪いかは別問題であり、今の日本と対比させてみて、相手のことよりむしろ日本自身のこと(資本主義国家)について考えるチャンスを与えてくれた一冊である。

 

書名

著者

出版社

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読了日

ビジネスエリートの条件

城山三郎

講談社文庫

83/

未記入

未記入

S56/8/19

前作「プロフェショナルの条件」と同じく対談集であるが、今回は相手が比較的高齢の財界人であるということ、テーマに時事的要素の強い経済問題をメインに据えて、しかも8年前に出版されたものとなれば、やはり時代のズレを感じるのは否めなく、ピンとくることが少なかった。久々の選択ミスであった。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

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読了日

有吉佐和子の中国レポート

有吉佐和子

新潮文庫

83/

未記入

未記入

S56/8/24

以前この人の「複合汚染」を読みかけて途中で放棄してしまい、そのまま読んでいない。今回のこの「中国レポート」であるが、読みかけてしばらくして、また放棄したくなったが、思い直して最後まで読み通した。自分には有吉佐和子という人の作品は生理的に合わないのであろうか。それとも選んだ2冊がたまたま悪かったのか、相手が評判の大作家だけに連続してこういう傾向が出ると思わず悩んでしまうが、今回はなんとか読み通すことが出来てよかった。でもこの人の作品は多いし、そのうちきっと自分に合う良い作品に出くわすに違いない。今回の作品はタイトルこそ「中国レポート」とあるが、もし自分がこの本にタイトルをつけるとすれば少しだけ変えて「中国農業レポート」あるいは「中国人民公社レポート」とか「中国農民事情」とかというふうに落ち着くだろう。それほどにこの本の中身は農業のことばかりなのである。しかの「複合汚染」を書いた後だけに、DDT・BHCなどの農薬のことや、化学肥料のことを何度も何度もしつこいほど記述しており、これにはいいかげんにうんざりするのは決して自分だけではないだろうと思う。こちらから言わせてもらえば、こういうテーマを掘り下げることは専門の学者とか研究者に任せておき、文学者奈良文学者らしくもう少し広いテーマで中国を見て、それを読者にみずみずしい人間描写を主体としてレポートすることが先決ではないか。既にそうしたものを世に出した後の作品としてならいいかもしれないが、初めて中国に関するものを出しにしては、あまりにも一般大衆向きでなさすぎる。いかに現代中国が人民公社を主体とする農業中心の国家だとはいえ、内容の90%以上を農業問題でうめ、そしてタイトルに「有吉佐和子の中国レポート」とつけて出版するのは読者を欺くことではないだろうか。こうしてひはんしながらも、かなり分厚い文庫本にもかかわらず、最後までつきあったのは、大作家有吉佐和子研究のためにだけである。いま、中国人に興味はあっても中国農業問題にはさして興味はない。中国人の人間そのものとしての生活描写や心理描写がほとんど無かったことも不満の大きな要因である。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

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読了日

船井幸雄の新経営革命

船井幸雄

PHP新書

83/

未記入

未記入

S56/8/24

中内功とか長谷川慶太郎などのそうそうたるメンバーが表紙のカバーに推薦文を書いてイル割にはもう一つ内容がパッとしない経営書である。テーマに上げたことが独自性に乏しく、ユニークさもない。この著者にとって、これが30作目の著書になるそうで、内容が薄いのは多分出し過ぎのせいであろう。

でもあえて参考になった点をあげてみると

※経営者内必要な条件とは

①野心  ②カン  ③ワンマン性

※物的無駄の時代は終わり、これからは文化的無駄の時代になっていく

※これからの経営は原理原則に外れてはならない

※これからの時代は情報を制するものが世の中を制する

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

黒い手帳

松本清張

講談社文庫

83/

未記入

未記入

S56/8/26

この本は随筆集であるが、この中で作者が作品を書くために使っている創作ノートが公開されていて、これが大変おもしろい。人に聞いた話、新聞んで読んだ記事、街で会ったひとなど、何からでもデー魔を広い、そこから小説のストーリーを展開させていく。その素晴らしい才能は驚くべきである。

 

✩この期間に読んだその他の本(タイトルと作者)

 

・読書と私(文藝春秋編)

・日本のメガトレンド(竹村健一)

・耳ぶくろ(文藝春秋社)

・虚業が実業に成る日(岡田康司)

・ニュービジネスアイデア集(西谷 史)

・悪徳セールス撃退法(日本消費者連盟)

・素敵な活字中毒社(椎名 誠)

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