2021年11月23日火曜日

小説新人賞応募者はぜひ読んでほしい

編集者が応募者へ贈る渾身のアドバイス2021年最新版

小説新人賞はたくさんありますが、その中で賞を受けると小説家へ直結すると言われるメジャーなもの (エンターテイメント分野)は、オール読物新人賞(文藝春秋)小説現代長編新人賞(講談社)、小説すばる新人賞集英社)の3つです。

今回このアドバイスを書いたのはその中の一つである小説現代の講談社です。執筆に当たっているのはいうまでもなく小説新人賞担当の編集部の方々です。

その方々が日頃新人賞の応募に対峙して得た貴重な経験ををもとに書いた応募者に対する熱いメッセージです。

内容は、心構え、技術的なこと、入賞作の時代的傾向など多岐に及んでいます。

ごく最近ネット上でみつけた記事ですが、数多くあるこうしたものの中でも滅多にないような珠玉のメッセージ集です。

小説新人賞応募者の方々、必読です。

 

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《編集者から応募者へ渾身のアドバイス・13編》

小説というのはどういうふうにでも書けるすごく自由なものです。現在のコロナ禍で人々の行動が変容していくように、今後も従来とは異なるまったく新しい形の小説が誰かの頭の中で生まれているはずです。表現にあたってはそれを共有してくれる他者の存在を思い描きながら書くことが大切だと思いますN島)

登場人物たちの心の動きを丁寧にリアルに追って欲しいと思います。そこに瑕疵があれば、どんなに壮大な物語でも無理が生じますし、逆に登場人物に寄り添うことができれば、小さな物語でも大きな感動や共感、興奮を呼べるはずです。また、大切な原稿、最後にぜひご一読を。誤字脱字は勿体ないです!N谷)

「どこかで見た事がある展開だけど、うまくまとまっている」小説よりも「文章も破綻しているし力技であることは否めないが、誰にも似ていない発想力や熱量がある」小説のほうが魅力を感じます。人物、テーマ、仕掛け等の設定に妥協せず「これだけは絶対に自分しか思いつかない」という自信を潜ませて。O久保)

新人賞の応募原稿を長年読んでいて、小現では受賞できなかったが、後に別の作品で他社の賞からデビューする作家に出会うこともあった。そのまま仕事をする機会がなくても、その作家は小現ファミリーだと、勝手に個人的に思っている。

本選考会でタイトルが良くないと指摘される候補作は毎年あり、その数も多い。逆に言えばタイトルが悪くても最終候補には残れるし、もちろん受賞することも可能だ(改題してデビューとなる)。大事なのが作品本体であることは言うまでもない。

応募作の読み方は人それぞれ。私は梗概を後回しにして本文から読む。どんな楽しみが待っているか知らないまま作品に入った方が新鮮だし、受賞して本になったら、読者もそういう読み方をするはずだからだ。

 

最終候補にまでなれなかった中にも、強烈な印象を残している作品が過去にいくつもあり、場合によっては受賞作よりもずっと記憶にとどまっていたりします。それらの共通点は「個性」と「世界観」。是非ともオリジナリティーを極めて下さい。

今年デビューする第14回受賞者は3人全員が応募作を1ヵ月で書き上げたと言っています。つまりまだ余裕で間に合う! 長編だからといって肩に力を入れる必要はありません。長編の方が自由に書けます。寄り道、アンバランスを恐れずに。それが武器になることもないとは言えません。K林)

娯楽に溢れた時代。小説の最大の武器「イメージ喚起力」を生かして、言葉だけで未知の世界へ連れて行ってほしいです。そのためには、終わりを気にせず、ツカミでできる限り大風呂敷を広げて下さい。キャラクターを疾走させて下さい。途中失速してもいいから、そのまま最後まで走り切って下さい!K)

冒頭の掴みも大切ですが、今何を書けば、世の中に受け入れられるか「テーマ」をよくお考えください。読む相手は編集者だけではなく、その先の読者を意識すること。読了後の感情の変化は?(感動、切ない、驚きなのか)、その物語を一言で説明するとどのような話?、を意識してご執筆してみてください。Y下)

一度読んだら頭から離れない話が読みたいです。ジャンルを問わず、少しくらい矛盾があっても、ラストまで描ききって欲しい。そして自分自身で読み返した時に、なんて面白いんだ、と思えるような物語にして下さい。まずは自分を楽しませることを目標に頑張っていただけたら嬉しいです。T田)

フィジカルに小説を読むので『あいうえお」が秀でているものに弱いです。『あたらしい』『いじらしい』『美味い』『エモい・エロい』『オーソゾックス』。『あ』と『お』は矛盾しているようですが、太古から小説(物語)の大筋に、そんなにバリエーションはないかと。O村)

新人賞はジャッジではなくスカウト。応募者のポテンシャルと将来的な可能性をみています。だから完成された百点満点の作品である必要はない。この先何年も何十年も読者を楽しませてくれる小説をともにつくっていける新人を求めて、今年も千本以上の応募作をぜんぶ読みます!(編集長S)

出典:応募者必見! 編集者が語る小説現代長編新人賞・虎の巻

 

 

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