2024年5月26日日曜日

この本が良かった 「酒と作家たち」 浦西和彦 中公文庫

 



2012年に出た本だから新しくはない。でも良い作品だったので書評に取り上げることにした。

作家に酒と女、それに金の話はつきものだが、その中のひとつ「作家と酒」がこの本のテーマである。

登場するのは有名作家ばかりだから、取り上げられたエピソ-ドも、すでにどこかで聴いたことがありそうなのだが、意外とそれがなく、新鮮で味わい深いものが多かった。

それと併せて特筆すべきは書き手の豪華さだ。名だたる文芸評論家、文学者、作家などがそろっており、収められている作品はクオリティの高いものばかりである。

それにしてもこれほど質の高い作品をあつめて一冊にまとめた編者・浦西和彦氏の力もすごい。

そうした作品の中から、出色と思われた話をひとつ、ここでご紹介しよう。

文芸評論家・奥野健男が、作家・高見順の銀座のクラブでの話を綴ったものである。

 

・・・それ以降文壇のパ-ティの帰りによく誘っていただいた。銀座の有名クラブでも知的な風貌と独特の話術でホステスたちを引きつける。あるとき「ぼくのオチンチンこれっぱかししかない」と小指の先をたて、左手の指でにぎり、先っぽだけを見せるのだった。「うそ-」「まさか」と悲鳴をあげるホステスに沈んだ声で恥しそうに「いやほんとなんだ。ロ-ソク病というのかな、先からどんどん溶けていくんだ。かなしい話さ」なんて真に迫り、だんだん女の子たちも可哀そうにと、深刻な顔になって来る。それが高見さんにはたのしくて仕方がないらしい。  

(出典:「酒と作家たち」中公文庫)


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目次(BOOKデ-タベ-スより)

1 文豪の酒

2 作家の酒

3 評論家・学者の酒

4 詩人・歌人の酒

5 剣豪作家・推理作家の酒

6 流行作家の酒]


 

著者情報(BOOKデ-タベ-スより)

浦西和彦(ウラニシカズヒコ)
1964年、関西大学国文科卒業、86年『日本プロレタリア文学の研究』で文学博士。著書に『著述と書誌』全四巻など。関西大学名誉教授(本デ-タはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

                  出典:楽天ブックス

 

ブクログのレビュ-(書評)


*投稿日:2024年03月16日

図書館で目に留まった本。

いろんな作家さんの酒についてエッセイ集かと思ったら、
「酒」という趣味の雑誌に各界の人々が作家との酒縁を綴ったエッセイからの収録だったw
もう廃刊になってしまったけど、佐々木久子という人が孤軍奮闘し、独力で刊行し続けた雑誌らしい。
昭和30年に4月に発刊され500号余りを出したとのこと。
坂口三千代の「クラクラ日記」も「酒」に連載されたのをまとめたものとのこと。
文豪の方々も出てきて、なかなか面白かった。
佐々木久子さん、酒の本をいろいろ出されているらしい。
気になる-w
 

*投稿日:2022年11月17日

名だたる文豪の酒エピソード集。
冒頭に漱石と赤酒の話が出てくるが、今でも熊本の人は正月には必ずお屠蘇の酒として赤酒を飲んでいる。
なかなか癖があって大量に飲むのは、少々つらい酒なのだが、京都の料亭では料理酒に使ったり、最近はソ-ダ割にして飲んだりと、いろいろと使い道はある。
川端康成は相当な脚好きだったようだ(文芸オタク界隈ではわりと知られているっぽい)。毎晩ディスコへ女の子の脚を見に行っていたとか。なんか微笑ましい。

 

*投稿日:2016年09月22日

故人との酒の逸話で偲ぶエッセイが多く、読了はしんみりする。有名作家の意外な一面、昭和の文壇の雰囲気などがわかり面白い。]


出典:楽天ブックスランキング情報


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