2019年4月9日火曜日

Are you still here?といわれてはいけない


Are you still here?と言われて自己嫌悪を感じたことがある
 

日経新聞に「50代転職、3年で倍増」というタイトルの記事が載っていましたが、これを見てふと脳裏に浮かんできたのがAre you stil here?という英語のフレーズです。 

もう30年以上前のことです。わたしはホテルマンとして都市ホテルのフロントで働いていました。 

外国人客の多い大都市の一流ホテルです。そこでフロントスタッフとした働いていたときのことです。 

宿泊客の半数以上は外国人が占めていました。外国人といっても今のように中国人や韓国人は少なく欧米からの白人がほとんどです。 

それも観光客よりビジネスマンが多かったようで、中でも目立ったのは日本に商品を買い付けに来るバイヤーです。 

そのバイヤーの一人に毎年何回もやってくるMr.Bensonというアメリカ人がいました。年に数回来ては何週間も滞在する常連客なのでホテルのスタッフなら誰でも知っているほどの人でした。 

その彼がある時、ホテルに到着するや否や、フロントで迎えるわたしに向かって突然Are you still here?と言ったのです

 

Are you still here?「まだここにいるの?」という意味だが
 
ベンソン氏にそういわれたとき、わたしはなんとなく恥ずかしさを感じました。
なぜなら、自分が無能なのではないかと、疑われた気がしたからです。
 
つまりAre you still here?を裏返せば、この仕事しかやることないの?他にユーを求める職場はないの?などといわれているような気がしたのです。
 
要するに「無能ではないのか」というニュアンスの軽蔑の眼を向けられているように思ったのです。
 
フロンティアスピリッツが強く、どんどん新しいことに挑戦するのを良しとするアメリカ人の目からは、同じところに留まっていることは、無能と見えるのかもしれない。
 
そのときそう気付いて、それ以来Are you stil here?はわたしの中では禁句となっているのです。
 
 
永年勤続は美徳ではなくなった
 
ベンソン氏に「まだここにいるのか?」と軽蔑の眼を向けられたとはいえ
 
当時はまだ永年勤続が美徳の時代で、職を変わることはどちらかといえば非難の対象になった時代です。
 
要はいったん就職したら定年までその職場で過ごす、のが美徳とされていたのです。
 
企業は終身雇用をモットーとし、社会全体が永年勤続を奨励していたのです。
 
それゆえにそんな時代にAre you still here?と問う人も問題ですが、「無能なのでは?」と早とちりした側にも問題があったかもしれません。
 
でも今は大きく事情が変わってきました。
 
 
同じ職場に長年いる人は無能とみなされる
 
30年以上前に、アメリカ人が長年同じ職場にいる人を無能と考えたことが、今やっと日本人にも理解され始めたのです。永年勤続や終身雇用が意味を持たなくなってきたのです。
 
要するに同じ職場に長くいることは、今では無能を意味するようになっているのです。
 
それもそうかもしれません。人は学校を卒業すると就職しますが、それは単にとりあえずのことなのではないでしょうか。、つまり、とりあえずどこかに就職してそれから先のことは働きながらじっくり考えるという姿勢です。
 
こうした考えがいまの主流で、間違っても、初めて入った会社で、一生過ごそうなどとは考えないのが当たり前になっているのです。
 
そういった時代だからこそ、You still here?といわれることは非常に恥ずかしいことなのです。
 
つまり、いまそういわれることは、とりもなおさず「あなたは無能です」と言われていることに他ならないのです。

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