2024年4月10日水曜日

本の腰巻(帯)が捨てがたい


本の腰巻とは何ですか

書籍において本についてのキャッチコピーや推薦文等を記載し本の一部分を被うように巻かれた紙を指します。 「帯紙」、「腰巻とも呼ばれ目を引く内容を記載して宣伝効果・購買意欲を高めるために付けられます

 

かつて井上ひさしが審査員の日本腰巻文学大賞というのがあった

作家井上ひさしは本の腰巻について書物を最後に古本屋へ売り飛ばすつもりなら帯やカバーやパラフィン紙や函は大切に保存しておいたほうがいい

丸裸にしてしまった書物は驚くほど安く買いたたかれてしまうからだと言っています

でもこう言いながら読みにくさから捨ててしまう方が多かったようです

このように井上ひさしに限らず捨ててしまわれるのが多い本の腰巻ですが、親しみと愛着を持っている人たちも少なくないようです

その証拠にかつては日本腰巻文学大賞というものがあったのです

井上やすしはその審査員の一員でしたがちなみにこの第七回の賞は大賞が星新一の安全のカード」、第一位が和田誠いつか聴いた歌」、二位が武田泰淳私の映画鑑賞法となっています

出典まるまる徹夜で読み通す井上ひさし 岩波書店



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井上ひさし 本の腰巻推薦文の傑作

井上ひさしは本の推薦文を腰巻(帯)にたくさん書いていますが、そうしたもの中から優れた作品を一篇ご紹介いたします。


阿久悠著作詞入門 阿久悠ヒットソングの技法

クリエーターの壮絶な生きざま


阿久悠は十年か二十年に一度出るか出ないかの才能に溢れた作詞家である

この本を読むとその彼でさえ一篇の詩に生命を与えるためにどれほど苦しい時間を過ごさなければならないかそれがじつによくわかる


彼はわれわれの生きる時代を芯の芯まで解剖し人の生き方を底の底まで観察し市場を徹底的に調査し歌手を骨の髄まで分析しさらに汗と血みどろの孤独な数十時間を経てようやくひとつの詞を誕生させる


彼の詞が圧倒的に受けるのはかつて必然となる


だからこの本からわれわれが学ぶのは単なる作詞の技術ではなく作詞を生業とするひとりの人間の生きざまそのものについてなのだ


この本はそこで人生論としても第一級のものとなった


               (1972 産報ジャーナル/カバー


出典:「まるまる徹夜で読み通す井上ひさし 岩波書店






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