2018年6月10日日曜日

思わず笑ってしまった ・ あるケチな老人の話


喪主の老人が葬儀社との交渉で言ったこと


これは光村図書から出ている「ベストエッセイ2015」に載っている作家の麻生鴨氏が「交渉」というエッセイの中で書いていることです

氏の祖母の葬式へ出席したときのことです。

無類のケチであることを自他ともに認めている喪主である祖父が葬式の費用について、葬儀業者と値引の交渉していました。

その交渉内容は驚くべきものでした。


≪交渉・その1≫お棺は段ボール製でも良いからなるべく安いものを


ケチな祖父は「燃やしてしまう棺桶に高級な木製はもったいないから段ボール製の安いものにしてほしい」と言いました。

段ボール製の棺桶とは聞いて驚きますが、果たしてそんなものがあるのでしょうか?

調べてみますと、段ボール製の棺は実際にありました。

エコ棺とも呼ばれているもので、材料になる森林資源を3分の2に抑えて、残り3分の1は段ボールを使用しています。

段ボールとは言え、強度や外観は木製のものとほとんど変わりません。

しかし、いまのところ需要が少ないため値段は木製のものと比べて特に安いとは言えません。

エコ棺のメリットは、エコの名の如く、1回の火葬で使用する灯油は従来のものの半分で、しかも燃焼時の有毒ガスを3分の2も減らすことができます。

ヒト用のものに比べてペット用のものは比較的普及が進んでいるため、価格もリーズナブルな数千円台のものが多いようです。

祖父は値段が木製のものと変わらない、と聞いてしぶしぶ諦めたようです。



≪交渉・その2≫霊柩車はもったいない、代わりに自宅のバンを使ってもいいか



ケチな祖父が次に持ち出したのは霊柩車です。

短い距離を走るだけなのに霊柩車の値段は高すぎる。代わりに家のバンを利用することはできないか。

これには葬儀社の人も返事に窮したようでしたが、結局、葬儀社からは「そんな例は過去にもないし、規約にもないのでご要望には応じかねる」と丁寧に断られました。


≪交渉・その3≫祭壇も花も もったいないから要らない



祖父は祭壇は必要ないと言います。それに花もすぐ捨ててしまうので、もったいないから要らないと言います。

これについては、できるだけ質素にするからと言って、なんとか納得させました。


≪交渉・その4≫お坊さんのお経は長さを半分にして金額を負けてほしい、それが無理なら声を小さくして、その分安くしてほしい


最後に祖父が言ったことは、ケチの面目躍如とも言えるような、驚くべきことです。

なんとお坊さんのお経の値段を値切るのです。それも単に負けてくれ、と言うのではなく、お経の長さを半分にして、その分値段を安くしてくれ、と言うのです。

これには葬儀社もあきれてしまいましたが、お経が全部やってこそ成り立つもので、半分だけでは意味がない、と突っぱねられました。

祖父はそれでも負けてはおらず、それが無理ならお坊さんのお経の声を小さくして、その分お布施に値段を安くしてくれ、と言うのです。

これには皆、腹を立てるのを忘れて大笑いしてしまったということです。

ケチもここまでくるとユーモアになる、としか言いようがありません。


(参照)麻生鴨 「交渉」光村図書「ベストエッセイ2015」収録


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