2011年9月14日水曜日

近日中に読みたい本2冊は、これ!




書評を見たら、読みたくて "ぞくぞく" してきた。


天の方舟  [著者]服部真澄  講談社 価格:¥ 1,995

[評者]田中貴子(甲南大学教授)  [掲載]2011年08月21日   [ジャンル]文芸


■金で変わる女性描く「悪女物」
 
金は低きに流れない。金は金のある方へと流れるのである。ODA(政府開発援助)にも、その法則は当てはまる。途上国援助の名の下で、億単位の贈収賄というブラックマネーが動くのだ。

そうした金の濁流を20年以上泳ぎ続けた経営コンサルタントの逮捕シーンから、物語は始まる。

彼女の名は黒谷七波。エリート大学の垢(あか)抜けない学生が、貧困からの脱出を目指して飛び込んだ世界がODAだった。

キャバクラ嬢時代、ふと耳にした「金の集まる裏の世界」で、彼女はその手腕を振るう。そしてこう呟(つぶや)くに至る。「おいしいですね、ODAは」
 
何しろ取材が綿密である。その上、矢継ぎ早に展開するストーリーは、私のような経済オンチでも十分楽しめた。
 
また本書は、一人の女性が金を通じてどんどん姿を変えてゆくという「悪女物」として読むこともできる。

しかし、ある大事件がもとで、七波の中に葛藤が芽生える。そして驚愕(きょうがく)のラストが……。
 
一気読み確実の一冊だ。

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安心ひきこもりライフ [著者]勝山実  太田出版 価格:¥ 1,470

[評者]斎藤環(精神科医)  [掲載]2011年09月04日   [ジャンル]社会


■けしからんが必読なのだ

実にけしからん本だ。
 
ひきこもりの第一人者(笑)たる評者の著書を「可もなく不可もない」と一刀両断。

政府のひきこもり対策事業を「ひきこもり関ケ原」などと巧みに茶化(ちゃか)す(うっかりニヤニヤしたのは秘密だ)。

この"名人"に「就労など煩悩に過ぎない」と言われては、治療者として返す言葉もない。
 
ほかにも「腐れチャレンジ」「働かざること山の如く」「半人前理想主義」「自立とは正しく落ち込むこと」「月見草でいいじゃないですか」など名言金言が目白押し。

目指すは罪の意識なく、のびのびひきこもる生活。そのための福祉サービス利用法、甥(おい)っ子とのつきあい方など、当事者ならではの超実用的なアドバイスまである。
 
「可能性を広げるとは、堕(お)ちること」と主張する本書は、現代の小さな「堕落論」だ。

なのに本書の「笑い」には逆説的な希望、評者には決して示し得ない希望がある。けしからんが必読なのだ。


   以上、朝日新聞「書評}より

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