2025年3月12日水曜日

この記事がおすすめ・シリーズPart 2【6~10】全9.590文字 (Play Back series No.2)

 


  もくじ


その6

THE SANDPIPER(いそしぎ)


その7

Space speaks・空間(間隔)は語る


その8

高級ホテルのロビ-にたむろする怪しい人たち(その4) ・ ホテルのスタッフを見事に騙すスキッパーとは?


その9

ベストセラー作家シドニーシェルダンの小説に見る・鮮やかな詐欺の手口


その10

ホストにはまる女たち 

書評「ホス狂い」宇都宮直子 小学館



 (その6)  

もう一度読んでみたい・高校英語リーダー名作シリーズ

      THE SANDPIPER(いそしぎ)

           

      Mary Sherman Hilbert(出典:new horizon 2,L3)訳:大平庸夫 

 

 

この話は、ピーターソンという女性とウェンディーという少女の交流を、事実に基づいて描いた物語である。

 人けのない砂浜で1人で遊んでいる少女のことを、ピーターソンは初めはあまり気にかけていなかった。その頃の彼女の気持ちはあまりにも荒涼としていて、少女と遊ぶような余裕はなかったのである。だが時がたつにつれて、彼女はこの少女ウェンディーや、浜辺に飛んでくる イソシギ という鳥について多くのことを知った。でも何よりよく自覚できたのは彼女自身のことについてであった

 

 

 私がはじめてその少女を見たのは、彼女が浜辺で砂のお城を作っているときであった。

 

「砂の手ざわりって、とても気持ちがいいわ」 少女が見上げながら言ったが、私はそんなことには少しも関心がなかった。その頃の私は、周りのすべてのことにうんざりしていて、心の余裕など少しも無かったのだ。

 

 「名前なんていうの?」 少女が聞いた。


 「ルースよ、ルースピーターソン」 私はややぶっきらぼうに応えた。

 「わたしウェンディーというの、6歳よ」

 イソシギが滑るように飛んできて海岸の方へ下りていった。

 「ママはね、イソシギって幸せを運んでくるんだって」


 少女は私の方を見て

微笑みながら言った。私はぎこちない笑顔を返すと、少女を残してそこを離れた。


 「また来てね、ピーターソンさん。この次はきっと楽しいよ」

 

 数日たった或る晴れた日の朝、 ”どうやら私にはイソシギが必要なようだわ ”

 そんな独り言を言いながらコートを着ると足は浜辺の方に向かっていた。頬に冷たい風を受けながら私はどんどん歩いた。

 

 その時はあの少女のことが頭に無かったので、彼女の姿を見たときは一瞬びっくりした。

 

 「こんにちは ピーターソンさん、私と遊びたい?」

 「あなたは何がしたかったの?」 

 子どもに邪魔されるうっとうしさをかろうじて抑えながら私は応えた。

 「うーん、分からないわ、お姉ちゃんが言って」

 「言葉当てゲームはどう?」 私は皮肉っぽく言った。

 「わたしそれ知らないわ、何なの?」

 「そう、それじゃ仕方ないわ。歩きましょ」

 少女を見たとき、その顔色がいくぶん青白いのに気がついた。

 「どこに住んでいるの?」 私はそう訊ねてみた。

 「あそこよ」 彼女は避暑用の別荘を指差しながら答えた。

 それを聴いたとき、こんな冬になぜだろう?と、私にはすごく不思議に思えた。

 「どこの学校へ行っているの?」

 「学校へは行っていないの。私たちは今休暇中だって、ママが言ってたわ」


 浜辺を歩いている間中、彼女は嬉しそうな顔をして喋り続けていた。でも私は別のことを考えていた。

 

 私が家にかえるとき、ウェンディーが「とても楽しい日だったわ」と言った。

 私はいくぶん気分がよくなっていて、彼女を見て微笑んだ。

 

 それから3週間たった或る日、私はこの上なくうっとうしい気分を持て余しながら、また浜辺に行ってみた。

 その日はウェンディーと話すどころの気分ではなく、彼女の母親が彼女を外へ出さなければいいのに、というふうにさえ思っていた。

 

 「ねえ、もしよかったら・・・・・」

 ウェンディーが私を見つけて、ついてこようとしたとき、私はさも機嫌悪そうな声で言った

 「私ねえ、今日は1人でいたいのよ」

 「どうしてなの?」 そう訊いた彼女の顔は、前の時より一層青ざめて見えた。

 私は彼女の方を振り向くと、自分でも何を言っているのかはっきり自覚することもなく

 「何故って、私のお母さんが亡くなったからよ!」と叫ぶように言っていた。

 

 無邪気な子どもを前に、なんと馬鹿なことを言ってしまったのだろう。

 「そうだったの」 彼女は静かに応えた。

 「じゃあ今日は悪い日なのね」

 「そうよ、今日だけでなくて昨日も一昨日もよ。ねえ、私なんかほっといて向こうへ行って遊びなさいよ」

 残酷な言葉だとはよくわかっていたが、そう言うと彼女を残して立ち去った。

 

 それから一ヶ月くらいたってから、私はまた浜辺に行ってみた。この前言ったことに対して恥ずかしさと罪の意識を持ちながら、私はウェンディーを探して歩いた。でもいくら探しても彼女は見つからず、代わりに一羽のイソシギが静かに飛んでいるのが見えた。

 私はそのとき初めて、彼女が側にいないことの寂しだを感じていた。

 

 それからすぐ彼女の別荘へ行ってドアをノックした。まだ若くて美しい女性がどあを開けて現れた。

 

 「私アンダーソンと申します。お宅のお嬢さんが今日は浜辺には見当たらず、どこにいらっしゃるのかと思いまして・・・・・」

 

 「まあ、あなたがアンダーソンさんでいらっしゃるのね。どうぞお入りになって。ウェンディーがいつもあなたのことを話していましたわ。あの子、あなたの邪魔になったんじゃなくって? もしそうだったのならご免なさいね」

 「いいえ、決してそんなことはありませんでしたわ。とても賢いお嬢さんでいらして」

 とつぜんそう応えながら、私はそのことに初めて気がついたという風だった。

 

 「それで今どこにいらっしゃるのですか?」

 「ウェンディーは先週亡くなりましたわ、ピーターソンさん。あの子、白血病だったんです」

 

 私の胸を激しい動悸が走り言葉を失ってしまった。立っていられない気がして近くの椅子をまさぐった。心臓が激しく打っていた。

 

 「あの子、浜辺がとても好きで、あそこで楽しい思いを一杯したようだったわ。そうそうピーターソンさん、あの子がこれをあなたに渡してくれるように言ってたわ」

 

 彼女はそう言うと、子どもらしい字で、Miss.Pへ、と宛名書きした封筒を手渡した。中には黄色い砂浜、青い海、そして茶色い鳥がうすい色のクレヨンで描かれた絵が入っており、その下の方に太い文字で ”イソシギがお姉ちゃんにしあわせをはこんでくるよ ”と書いてあった。


 大粒の涙がどっとあふれてきた。そしてそれと同時にほとんど忘れかけていた温かい”人の愛”に触れた思いがして、胸のつかえが一気に晴れたような気がした。

 

 「ごめんね、本当にごめんね!」 泣きながら私は何度も何度もそう叫んだ。

 小さな絵の下に書かれた一行の文字、この一文字一文字こそ、彼女が生きてきたかけがえのない一日一日だったのだ。これこそ、私に真実の愛を教えてくれたあの少女からのすばらしい贈り物なのだ。



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この記事がおすすめ・シリーズPart 2【6~10】その7

(Play Back series No.2)


その7

Space speaks・空間(間隔)は語る



10年以上前になるが、高校英語「NEW HORIZON」(Ⅱ)の教科書に今でも忘れられない印象的な記事が載っていた。

それは本日のブログテーマの「Space speaks」と題した、人が会話するときのお互いのスペースには「国によって違いがある」ということが主な内容の読物である。

それまでそんなことを聞いたことも、また意識したことも無かったので私にはすごく新鮮で魅力テーマに思え、読んだ後には少なからず感銘を覚えたものだ。

内容はざっとこういうものである。

このアメリカ人の著者は、ある時外国からの外交官の訪問を受けたのだが、その時のエピソードを綴ったものが今回の話である。

「その南米から来た外交官は私と話し始めると、次第に私のほうへ少しずつ前進して間隔を狭めようとした。

私としてはそれにつれて後ずさりをはじめ、もとの間隔を保とうとした。

すると彼は『何で後ずさりなんかするのだろう、私は友好的に話し合うために近寄っていっているだけなのに』とでも思うかのように、怪訝そうな表情をして、しだいに話しにくそうなそぶりを示し始めていた」

著者としては自分が話しやすいと思うスペースを保とうとして「21インチ」ほど後退しただけなのだが相手はそれを理解しなかったのである。

そのことについて後になって、会話のときの心地いいスペースというのは国によって違いがあるのではないかと気づいたのである。

つまり自分たちが心地よいと考えているスペースは違う国の人々には必ずしもそうでなく、むしろ話し憎くて、心地悪いと感じるのかもしれないというふうにである。

例えば南米の人は一般的なアメリカ人より狭いスペースを心地よいと感じるようだが、逆にそのスペースで会話を続けることはアメリカ人にとっては好ましい状態でなく、むしろ不快感さえ感じるのである。

著者はまた次のようにも綴っている。

「一般的にアメリカ人はごく親しい人との会話を除いての普通の会話では、だいたい2〜3フィーとの距離を保っている。

でもラテンアメリカの人々はそれでは間隔が空きすぎると感じるので次第に前進して間隔を詰めてくるのである。

そしてアメリカ人はというと、そんなに間隔をつめられるのは馬鹿にされているというふうに感じ、後ずさりするのである。

でも決して彼らは前進することを止めないので、最後は机の下にもぐってでも間隔を保たざるを得なくなってしまうのである」

最後の部分は著者のジョークであろうが、「Space speaks」というこの話、中々興味が湧く含蓄ある内容ではあった。

さてわれわれ日本人が好む会話の際のスペースはいったいどれぐらいなのであろうか。


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この記事がおすすめ!【シリーズ1~20】 


その8

高級ホテルのロビ-にたむろする怪しい人たち(その4) ・ ホテルのスタッフを見事に騙すスキッパーとは?


スキッパーとは高級ホテル専門の無銭宿泊者のこと


どんな業界にも一般の人には理解できない業界用語があります。ホテル業界にもそうしたものがあって、特に高級なホテルになるほどその数が多いようです。

なぜなら都市の高級ホテルは、もともと欧米で生まれて発達してきたものが後に日本に入ってきたものだからです。したがって建物の仕様から、サービスのシステムまで欧米を真似たもので、それらに伴って専門用語も伴って入ってきたのです。

ホテル用語に圧倒的に横文字が多いのもそのためです。

専門用語のほとんどが英語のまま使われています。例えば次のような言葉がありますが、ご存知のものはありましたか?

・ノーショウ(no show)⇒予約客が連絡なしで来ないこと

・ウォークイン(walk in)⇒予約のない飛び込み客

・デイユース(day use)⇒宿泊を伴わない日中だけの利用

・ペイドインアドバンス(paid in advance)⇒料金前払い

・スキッパー(skipper)⇒説明は本文に


想像するところ、これらの用語でお分かりになるとすれば、文字通りの意味のデイユースぐらいではないでしょうか。

いうまでもなく、これらの用語はすべて英語がそのまま入ってきた専門用語です。

さて本題にはいりますが、5つ用語のうち上の4つはさておき、最後のひとつであるスキッパーが今回の記事のテーマです。

スキッパーとは、ホテルを舞台にする詐欺師のことです。

とはいえホテルの客を騙すのではなく、ホテルで働いているスタッフをだますのです。

このブログの過去の記事に「みごとに騙された京都のホテル」という記事がありますが、これを読んでいただければスキッパーがどのようなものか、その全貌がわかります。


高級ホテルこそスキッパーの絶好の活躍場所

スキッパーを簡単に言えば、ホテルの無銭宿泊・飲食サギのことです。つまり何日間もホテルに逗留し、その間の宿泊費や飲食費をまったく支払わずに姿を消してしまう人のことです。

街の食堂などの無銭飲食に比べて、金額のスケールが大きいのがスキッパーの特徴です。

それをよく表しているのが前回の記事にある京都のホテルですが、その被害額は実に100万円にも達しているのです。

これだけ大きい金額を騙されるのも、スキッパーの詐欺師としての腕が良いからに違いありません。

彼らはホテル滞在中はスタッフに対しては徹底して紳士的かつフレンドリーに接します。

例えば外出から戻った時はフロントや客室のスタッフにおみやげとしてお菓子屋キャンディなどを買ってくることをわすれません。

それにとても話し好きで、あれこれと話題を見つけては気さくにスタッフにはなしかけます。

それゆえにスタッフとしては親しみを感じ、つい気を許してしまうのです。

しかし、それがスキッパーの思うつぼなので、後でうまく利用されるのです。


ホテルの支払いは後払いが原則

話変わりますが、ホテルの料金の支払いは、一般的には予約客に対しては後払いが原則で、チャックアウト時にまとめて支払うことになります。

とはいえ滞在が長く、通常より支払額が嵩んでいる客に対してはこの限りではなく、途中で支払いを求めることもあります。

ということは、滞在期間の長いスキッパーも料金が嵩んで中途請求の対象になることもあります。

なにしろ高級ホテルのことですから、たとえ1週間の滞在でも部屋代だけで10万円近くなり、それに飲食費などを加えると15万円~20万円程度になることは珍しくありません。

こうなるとチェックアウトの中間時点で中途請求の対象になるのです。

でも普段からフロントスタッフとコミニュケーションを良好に保っているスキッパー氏ともなれば、強く請求できるとは限らず

「チェックアウトの時クレジットカードで一括払いにしてください」などと言われると、「了解しました」と二つ返事で請求を即座に引き下げてしまうのです。

かくしてスキッパー氏の勘定はその後も増え続け、スタッフが気がついたときは、スキッパー氏は姿を消してしまっているのです。

これで分かるように、ホテルを狙うスキッパーは、スタッフより一枚も二枚も上手なのです。

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この記事がおすすめ!【シリーズ1~20】

(その9)

ベストセラー作家シドニーシェルダンの小説に見る・鮮やかな詐欺の手口



シドニーシェルダンの比較的初期の作品に「明日があるなら」という小説がある。

もう10年以上も前に読んだものだが、まるで息もつかせないほどの見事なストーリー展開に胸をわくわくさせながら時間のたつのも忘れて一気に読み通したことを覚えている。

はっきり言って「こんなに面白い小説があったのか」と思わせるほどエンターティンメント性が豊かで、物語としては最高に魅力的な作品であった。

この小説をおもしろくさせている要素の一つとしてあげられるのが登場人物のユニーク性であろうが、とくにひきつけられたのが主人公の扮する名詐欺師ぶりである。

ここでその詐欺師が展開する見事なの手口を幾つかご紹介することにする。

なおこの本を読んだのはずいぶん前のことなので、記憶に誤りがあったりして、実際のストーリーと比べて細部に多少の食い違いがあれば、それはお許しいただきたい。


詐欺の手口(その1) まんまと引っかかった宝石店の店主

ある宝石店にすごく珍しい高価な宝石が陳列されていた。

主人公はある企みをもって数万ドルもするその宝石を買うことにした。

そしてそれを購入してしばらくたって再び宝石店におもむき、無いことをを承知の上で、店主に「同じものをもう一つ欲しいと伝えた」

当然のごとく「あれ一つだけで同じ物はありません」と店主がこたえた。

先刻そのことは承知しており、主人公は店主に対してある提案をした。

「どうしてもあれと同じものがほしいので、新聞に広告でも出して探して欲しい。値段はいくら高くてもいいから何としても探して欲しい」

値段はいくら高くてもいいと言うセリフに店主は食指を動かされ、早速広告を出して探すことにした.。

広告に提示された買取価格は驚くほど高価格であった。

その広告を見た主人公は、今度は入念に変装をして先日その店で購入した宝石を携えて、別人になりすましてまた宝石店へ向かった。

そして宝石をまんまと二倍の値段で売却したのである。

そしてホテルへ戻り、急いで身支度をするとチェックアウトして空港へ向かいその街を去ってしまったのである。


詐欺の手口(その2) 本物の100ドル紙幣と偽の印刷機


主人公のところにある男が訪れた。

部屋には印刷機らしいものと、その機械の上には濡れた100ドル紙幣が何枚もべたべた張られていた。

男が不思議そうにたずねた。

「あれはいったい何なんですか?」

「あああれねえ、先ほどあの印刷機で作ったばかりの100ドル札さ。まだ乾いてなくてねえ。ああして干しているんだよ」

「へえ、あの機械でつくった100ドル札・・。」

男はそう言いながら印刷機のそばへ近づいていき、100ドル札と機械を交互に眺めていた。

席に戻ってくると男は言った。

「それにしてもいいできですな。本物とまったく区別がつかない」

「気に入ってくれましたか。どうですか。あれが乾いたら1枚進呈しますから、外で使ってみたらいかがかな」

しばらくして男は乾いた100ドル札を手にして早速タバコを買いに外へ出た。そして満面に笑みを浮かべて戻ってきた。

「タバコ店でもまったく疑われませんでしたよ。ほらこれタバコのおつり」男はそう言って釣銭をテーブルに広げて見せた。そして店主にこう言った。

どうですか。私にあの印刷機を譲ってくれませんか。値段はお望みの金額で構いませんから。

主人公は男の言い分を飲んで100万ドルでその印刷機は売却した。

そしてすぐさま事務所をたたみ姿を消した。

その機械というのは今はもう出回っていない古い複写機で、上に張っていた100ドル札は本物を水で濡らしたものであったのだ。



この記事がおすすめ!【シリーズ6~10】


 その10

ホストにはまる女たち 

 書評「ホス狂い」宇都宮直子 小学館

なぜホストクラブは存在するのか、なぜ歌舞伎町に何千人ものホストがあつまるのか、なぜそこで女たちは大金を使うのか。

門外漢のものには、この理由はさっぱりわからない。

だがこの本を読むと、都会という場所に宿る邪悪な一面が見えてくる。 



(内容説明)

緊急事態宣言中でも県をまたいで週5で歌舞伎町に通い詰める人妻、「好きで好きで仕方なかった」という動機でホストを刺した女、虐待といじめを受け、地元から逃げ出して歌舞伎町の女性が集まるシェアハウスに居場所を作った少女、圧倒的な美貌と財力を武器に人気ホストの“彼女”の座を手にした女王。

自ら“ホス狂い”と名乗り、お金も時間も労力も体も、人生のすべてを賭けてホストクラブに通う女性たちは何を得ようとしたのか。

日本一の歓楽街に入り込み、見つめ続けた歌舞伎町ノンフィクション。

 

(目次)

第1章 歌舞伎町ホスト刺殺未遂事件(「刺されたホスト」琉月さんの復帰;「あのコにも僕を刺す理由があった」 ほか)

第2章 「人妻ホス狂い」いちごチェリーさん(クラスター発生 コロナ禍の歌舞伎町;歌舞伎町のコロナ対策 ほか)

第3章 「“ホス狂い”ユーチューバー」あおいちゃん(ゴミ屋敷・虐待・いじめ・家出―凄絶な半生;「鈴木葵」が「“ホス狂い”あおいちゃん」になるまで ほか)

第4章 「好きな人がたまたまホストだっただけ」ねねさん(「ホス狂い」ではなく「担当狂い」;絶対的エースになって彼の恩に報いたい ほか)

第5章 「歌舞伎町の女王」エミカさん(「マッチングアプリ」としての歌舞伎町;女王様の「3回ルール」 ほか)

 

(著者等紹介)

宇都宮直子[ウツノミヤナオコ]
1977年千葉県生まれ。多摩美術大学美術学部卒業後、出版社勤務などを経て、フリーランス記者に。「女性セブン」「週刊ポスト」などで事件や芸能スクープを中心に取材を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

 

(感想・レビュー)


ゆいまある

110

歌舞伎町のホストに嵌まる女性達のノンフィクション。いつも指名するホストは担当と呼ばれ、その太い客は一緒に暮らすこともあるという。

金が介在する疑似恋愛なのだが、自己肯定感の低い女性は風俗で働いてまでホストに使う金を増やすことで、「頑張り」を認められるシステムに取り込まれる。

惚れた相手ならホスト辞めてもらえばいいじゃないかと思うが、間に金があるから、関係が拗れても、それは自分のせいではなく金が足りないからだと思えて傷つかずに済むのだろう。余りにも…重くて暗くて。こんな世界もあるのか。2022/10/30


kinkin

101

新宿歌舞伎町のホストクラブで大金を使う女性4名の身辺とインタビューで構成されている。

 ホストクラブなど男だから当然行ったことが無いが、高価なシャンパンをホストたちが 一気飲みすることは知っていた。

1本数万から数十万のシャンパンっていったいどんな味が するのだろう?と考えながら読んでいた。個人的にはそれほどインパクトのある 本ではなかった。

著者の文章の癖などがあってこのあたりは週刊誌の記者らしいせいか。図書館本2022/12/04


ma-bo

72

歌舞伎町のホストに嵌まる「ホス狂い」の女性達のノンフィクション。刺殺未遂を起こした女性、週5で通いつめる人妻、ホス狂いユーチューバー、美貌や財力で人気ホストの彼女の座に登り詰めた女王。

縁のない自分にとっては共感し難い感覚だけど、知らない世界を覗かせて貰えた本でした。それにしてもNo.1にするためだとか、誰よりも高額なシャンパンタワーだとか結局は金銭が評価軸になるのはつらいな。2023/02/10


GAKU

49

ホストクラブにはまった若い女性達も、ホストになった男性達も多くは育った家庭環境に問題があるように感じた。

ホス狂いの女性とホストとの関係の愛情表現は、唯一”お金”。わかり易いと言えばわかり易い。

そして若い娘が一晩に数百万円以上もホストに貢ごうとしたら、当然風俗に身を沈めるしかないというのも納得。私達一般人には到底理解できない世界が描かれていた。

キャバクラ嬢や、風俗嬢にのめり込んだ男性達より、ホストにのめり込んでしまった女性達の方が地獄か......。2022/11/10


たまきら

38

ホストかあ…昔、かくれオネエな先輩が自分の行きつけに連れて行ってくれましたが、なんでこんな人たちにお金を払わなきゃいけないかちっともわからないままでした。

そしてこの本を読んでもわからないままでした。大体著者が何を言いたいのかがわからない。彼女たちはホストに「投資」しているのか、「貢いで」いるのかそこも自分にはよくわかりません。

ただ、きちんと自分を分析できる女性たちのインタビューは読みごたえがありました。2023/05/08]

(出典)紀伊国屋書店



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