2010年12月17日金曜日

1970 NewYorkスタットラーヒルトンホテルの「社員就業規則」・「西97丁目の思い出」番外編(2)


(旧)スタットラーヒルトン
(現)ホテルペンシルベニア

ヒルトンの就業規則

日本でもある程度社員数をもつ会社だと「就業規則」というものがあるのが普通である。

この就業規則、内容的にはまあどこでも似たようなものであると思うが、内容の如何を問わず社員たる者は当然それに従うことを義務づけられている。

ニューヨークにやってくる前にはそんなこと少しも意識していなかったのだが、やはりスタットラーヒルトンホテルにもそれはあった。

2000室もの客室数を誇るこの巨大ホテルには約700人ぐらいのスタッフが働いていたが、それら従業員の出身国は多種多様であった。

もちろん白人が一番多かったのだが、白人と言ってもネイティブのアメリカ人ばかりでなく、短期移住者のイタリア人とかドイツ人または北欧からの人も多く交じっていた。

その次に多いのはなんと言っても黒人で、これはほとんどがアフリカ系アメリカ人で、その多くはマンハッタンに近いブルックリンやクイーンス地域に住んでいたようである。

中にはマンハッタンのアップタウンのかの有名なハーレム地区に住んでいる人たちもいくらかいたようだ。

ある朝「How is your sexlife?」と大胆に問いかけてきて私を「ドギマギ」させたあのフロントオフィスの同僚「ミス・スーザン」も「130丁目」あたりのハーレムのアパートに家族と住んでいた。

このように多くの民族が混在しているニューヨークにあっては、異文化で育った人々の集まりだけに共通の意識を育てる意味でも、単一民族の日本など以上にこうした「社員就業規則」というものが必要になってくるのではないだろうか。

言うならば、それぞれが育った文化によってその「社会規範」であるとか「常識」とかがおのずと違ってくるであろうから、それを超越した「共通のルール」はなくてはならないものではなかろうか。

上に掲げてあるのは「スタットラーヒルトンホテル」の社員就業規則である。

全体の内容としては日本の会社のものと大きな違いはない。

ただやはりここでも欧米特有の[性悪説]にもとづいた、違反行為がなされることを前提とした 規則が多いようである。

資料の保存状態が悪く、コピーにもはっきり移ってないのは恐縮だが、例えば第一番に挙げられているのはタイムカードの問題である。

ここには「意図的に他人のタイムカードを打刻してはならない」というような意味のことが書かれている。

こうした違反行為についての項目が真っ先に挙げられているというのは、つまりこうした行為が日常的にアメリカの「会社社会」に蔓延していることを認めた上で、それに対して警鐘を鳴らしているに他ならない。

それ故に真っ先に挙げることによって強く社員を牽制し、喚起を呼びかけているのである。

日本のものだとこうしたことが項目のトップにくることなどとうていあり得ない。

やはりアメリカにあって最大の都市ニューヨークに出稼ぎに来ている百戦錬磨の「抜け目のない連中」を相手にするには、このような「先制パンチ」も必要なのではないかと外国人の一人として、私はそのことを強く感じたのである。

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