2010年12月15日水曜日

玄関の鍵、お宅は「シングルロック」?・それとも「ダブルロック」?

最近おもしろい本を読んだ。

それは「双葉社」という出版社から出された「職業ドロボー・年収3000万円」という新刊書である。

内容は7年間の刑期を終えて最近出所してきた長年「ドロボー」を稼業としてきた男の手記である。

この本にはドロボー目的で侵入した先の家の「玄関の鍵」についていろいろと書かれているのだが、沢山ある鍵の中で一番開けやすい(ピッキングしやすい)のはM社製の鍵穴が「縦」になっているものだそうだ。

古いマンションや公団などの集合住宅はこの鍵をつけているところが多いという。

ふだん鍵の形状などにはまったく無頓着の私ではあったが、これを読んだあとで、その「古いマンション」という指摘が大いに気になりさっそく築30年の我が家の玄関の鍵を確認してみると驚くなかれ、まさにそのM社の縦穴式のものであったのだ。

これを書いた「元ドロボー氏」によるとこの種の鍵ならわずか3〜4秒で開錠できるという。

そんなことを言われては、その鍵をつけている家の住人としては大いに不安になり夜もおちおち眠れないではないか。

だいいちこれに対して、その鍵のメーカーは果たしてどう対処するのであろうか。

少なくともテレビでも使って「鍵の付け替え」ぐらいは呼びかけて注意を喚起しなければいけないのではないだろうか。

話しは少し変わるが、鍵については私には忘れられない思い出がある。

それは二十代終りにニューヨークで生活していたときのことである。

当時私はある高齢のアメリカ人女性が所有する古いアパートの一室に下宿していたのだが、そのアパートの入口のドア—には見るからにいかにも頑丈そうな鍵が二つ付いていた。

いわゆる「ダブルロック」と言われるものである。

一階の玄関にも大きな鍵が付いているのにどうしてドアに二つもの鍵が必要なのだろうかと最初は不思議に思ったものだ。

でもあとで「マンハッタン西97丁目」というそのアパートのある地域は住人に下層階級の人が多く、そのため治安が悪く犯罪がたえないそうで、当然ドロボウや強盗も多く、それを防ぐ為のダブルロックだったのだ。

出入室の際の鍵の開け閉めは手間がかかるが、仕方のないことなのだと女主人は私に話してくれた。

そういった経験があるだけに、帰国した後の日本ではそうしたダブルロックをあまり見ることがなく、ニューヨークを代表とする米国と違って犯罪が少なくて安全な国であることをあらためて気づかされたのであった。

しかし今回この手記を読んで、今では決してそうとも言えなくなったきているとも感じてきた。

この「元ドロボー氏」はドアロック以外にも「ドアスコープ」のことにも触れていた。

普通「ドアスコープ」というのは外側からは中を覗くことは出来ないのだが、「リバースドアスコープ」という道具を使えば簡単に内部を覗くことが出来るのだそうだ。

これは外出から帰ってきた際などに、我が家に異常がないかを外から確認する為のツールだという。

特殊なレンズを使って作られているもので、値段は3万円以上と少し高いが通信販売などで簡単に購入できるらしい。

「元ドロボー氏」の話はさらに進んで、次は他人のクレディットカードのスクリーニングについても書いていた。

スクリーニングとは盗むのではなく隙を見て他人のクレディットカードを抜き取ってスクリーニング(種別や属性などの抽出)し、それを使って偽のカードを作るのである。

それにかかる時間は「わずか数秒」でしかないという。

でもスクリーニングに成功したからと言って、すぐにはそのカードを使わずに、カードの使用状況を通して所持者当人の生活スタイルをジックリ観察して、消費パターンを知った上でゆっくりとより効果的に使用するのだというなかなか知能犯ぶりを示しているのである。

最後になるがこの本で最も人々の「教訓」になると思う点を書いておく。

それはこの「元ドロボー氏」があるクラブで酒を飲んでいたときのことである。

少し離れた席でいかにも羽振りのよさそうな中年男性客がホステス相手に話していた声が偶然耳に入ってきた。

何げなくそれを聴いていると、その客は「明日から5日間ほど家族全員でハワイ旅行に出かけることになっているので準備の為今日は早く帰らなければならない」と言っていた。

それを聞いて「元ドロボー氏」は思った。

「家族全員で家族旅行」ということはその間家は無人になるわけだ。見たところ金回りのよさそうな客である。

「よし、後をつけて行って家の場所を突き止めよう」

その後店を出た「元ドロボー氏」はタクシーでその客の後をつけ家の場所を確認した。

そして翌日その家に侵入し、数百万円の預金通帳と印鑑、それ以外にも高価な時計などを盗んで換金し、おろした貯金と合わせて実に700万円以上の収穫があったのだという。

そしてその「元ドロボー氏」はその後の警察官の調べに際してこう言ったそうだ。

「壁に耳アリ障子に目あり、外でつまらない自慢話など口外したら高くつくことがありますよ」

もっともこれについては言われるまでもなくまさにその通りであるのだが・・・。

近年は高齢化社会が進んで家にいる老人が増えているとはいえ、核家庭も進んでおり昼間無人になる家はまだまだ多いと思う。

M社製の「縦鍵穴」のキーではないが「わずか3〜4秒」で開けられて空き巣に入られ、根こそぎ財産を盗まれてしまわないように、あなたのお宅にも「ダブルロック」はいかがですか?

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