2012年9月1日土曜日

この仕事は誰のため? ・ ”貧困ビジネス”に群がる人たち


ラジオでプロ野球中継を聞いていると、どうもあまり感心しないコマーシャルが耳にとびこんでくることがある。

いろいろあるが、最近ことによく耳にするようになったのが「過払い金請求代行」に関するCMである。

私がよく聞くものはタレントであり、プロ野球解説者でもあるB氏が登場するもので、「払いすぎたものは取り返しましょう」というようなキャッチフレーズを唱えているものだ。

こうしたCM、一時はテレビでもよく放映されていたが、今はラジオのほうが多いようである。

もちろんラジオだけではなく、電車などの中吊り広告でもよく目にする。

こうした広告のスポンサーにはたいてい法律事務所がなっているようだ。

私たちは法律事務所と聞くと、たいていの場合弁護士を連想する。

事件に関わった人たちをいろんな形でサポートするあの弁護士である。だから、どちらかと言えば弁護士は正義のために動く人と言うイメージである。

そういった人たちが「過払い金請求」などのビジネスに関わるのにはなんとなく違和感を感じる。

これって最近よく聞く一種の貧困ビジネスと呼ばれるものではないのだろうか。

つまり困った人を手助けするように装いながら、実際は自分たちの利益を狙っているのではないのだろうか。

何も弁護士たるものがこんなところにまで手を伸ばさなくてもいいものを、と思ってしまうのである。

思うに、弁護士が金融業者の前に出て過払い金を請求することなどいう行為は、実に容易にできることではないだろうか。

そんなに易しくて、簡単な仕事なのに、CMによれば手数料は戻ってきた金額の21%だそうだ。

21%でも十分高いのに、多分それだけではすまず、その他諸々の経費なども請求されるに違いない。

ボロイ商売である。仮にも法の番人とも呼ばれる弁護士が、なにもこんな仕事に手を染めることもないと思うのだが。

だいいち、おかしいではないか、そもそも過払い金を作ったのは、高金利をいつまでも許していた国の責任なのだから、それを取り戻す手助けも国の機関がやればいいのであって、所轄官庁が指導すればすむことである。

何も弁護士などに、濡れ手にアワのごとく、甘い汁を吸わすことはないのではなかろうか。

弁護士や司法書士はこの貧困ビジネスから即刻手を引くべきである。

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貧困ビジネスとは                            湯浅 誠

「貧困ビジネス」とは、どういったことを指すのかご存じだろうか。たまに誤解されていることがあるが、貧困ビジネスとは「貧困層をターゲットにしていて、かつ貧困からの脱却に資することなく、貧困を固定化するビジネス」という意味。

そもそも貧困ビジネスという言葉は私が考えたものなので、これが正式な定義と言っていい(笑)。

貧困層をターゲットにしているさまざまな活動には、いいモノも悪いモノもある。

しかし私が呼んでいる貧困ビジネスとは、貧困状態を固定化したり、貧困からの脱却に資さない、そういった悪いビジネスを指している。

なので定義上、良い貧困ビジネスというモノはない。貧困は克服されなければいけないモノであって、貧困ビジネスも克服されなければいけないのだ。

 貧困に関してはいくつかの特徴があるが、まず「複合的」であることが挙げられる。

さまざまなトラブルが折り重なって起きていて、「五重の排除」から成り立っている。五重の排除というのは、家族、教育、企業、公的から排除されるということ。

さらに自分の尊厳が守れず、自暴自棄になる――つまり自分自身からも排除されてしまう。

 その結果、いろんな分野でトラブルが複合的かつ必然的に起きてしまうのだ。複合的なトラブルというのは、労働、金融、住宅、福祉のトラブルであったりする。

例えば、当座のお金がないためにハローワークに行っても、月払いの仕事を選ぶことができない。そういう人は必然的に日払いや週払いの仕事をせざるを得ない。

それは本人が選ぶ、選ばないという問題ではなく、本人に選択の余地がないということ。

 そして月々の家賃のほか、敷金、礼金を支払えない人たちは、安い宿を渡り歩くしかない。サウナやカプセルホテルなどで泊まるわけだが、こうした行動も本人に選択の余地はない。

複合的なトラブルを抱える――これが貧困の特徴だ。このような状況に追い込まれる人たちは、障害者であったり、ドメスティックバイオレンスの被害者であったり、多重債務者であったり、生活保護者であったり、いろいろな人たちの間で起きている。





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